優しい歌声とあたたかく誠実なホスピタリティにあふれた、豪奢にして洗練されし空間はまさに執事歌劇団だからこそ生み出せるものであったに違いない。
池袋の乙女ロードに実在する執事喫茶Swallowtailのフットマンたちにより、課外活動の場として起ち上げられた執事歌劇団は、今年でいよいよ15周年を迎えるのだという。
ここまでには歌劇団の名のとおりにミュージカル仕立ての舞台公演をコンスタントに開催してきているうえ、それらの舞台で歌われている歌曲も含めた楽曲のCDも多々制作してきており、しかも全てはメンバー自らの作詞作曲したものだというから驚く。
もちろん、本業である執事喫茶Swallowtailのフットマンたる仕事ぶりも彼らは実にプロフェッショナルで、各メンバーはそれぞれにティーアドバイザー、ティーインストラクター、ソムリエ、レストランサービス技能士などのガチな資格も持っているそう。
つまり、執事歌劇団とはいろいろな意味で唯一無二な魅力を持った存在なのである。
そんな彼らが、このたび池袋のharevutaiで行ったのは執事歌劇団Concert[Tailcoat]だ。
コンサートと冠せられているだけあって、軸となったのはメンバー6人による歌と踊りにほかならない。
幕開けを飾った「Escort」では彼らがスタイリッシュな出で立ちでジェントルに舞い踊る中、観客フロアに向けて〈特別な空間で…格別なひと時を… 残された時間まで…私がエスコートしましょう〉と歌いかけることになった。
「本日はありがとうございます。
あらためまして、わたくしどもは執事歌劇団でございます。
普段はお嬢様方をお迎えしております、ティーサロン・Swallowtailに勤める使用人たちで結成されました。
本日のコンサートは古谷、影山、隈川、百合野、能見、そしてわたくし伊織の6人でお届けして参ります。
なお、この[Tailcoat]というタイトルは我々が身に着けております燕尾服のことです。
今一度、自分たちの基本に立ち返って、初心に還ってお届けしようという思いから、我々みんなでつけたタイトルでございます。
会場にお越しのお嬢様も、そして配信でご覧のお嬢様も、ぜひ最後まで楽しくご覧いただけましたら嬉しゅうございます」(伊織)
スパニッシュな雰囲気が漂う「バル・マスケ」では進行役を担う伊織が一旦ステージから去り、ともに作詞・作曲を手掛ける才にも長けた百合野と隈川がツインヴォーカルを展開しながら、古谷・影山・能見の3人が切れ味の鋭い舞踏を繰り広げる場面があったり。
かと思うと、ドラマティックな「File name~X~」では途中で林檎を手にした伊織が一瞬だけキーマンとして登場する演出がはさまれたり。
さすがは“執事歌劇団”の名を持つだけあって、コンサートと言えども彼らの提示するそれはただの歌舞だけに終始しないのがひとつの特徴。
また、MCではちょうどバレンタインデーが近かったということで、6人が好みのチョコレートについてトークするという微笑ましいシーンで“お嬢様方”が楽しく和めるような空気づくりがなされていたところも流石だった。
ティースタンドやティーポットを小道具に使いながらの、執事喫茶Swallowtailのフットマンたちによるパフォーマンスであることを最大限に活かした「アフタヌーンティー作戦」についても、この場に居合わせた誰もが極上のひと時を味わうことが出来たはず。
あげく、ティータイムの後には彼らが水族館にエスコートしてくれる“散策”までが用意されていて、この場面では「アクアリウムシンドローム」が歌われることに。
そればかりか、夕刻からはパーティ会場にまでエスコートしてくれる用意周到さで、古谷・影山・能見のソロダンスパートが堪能出来た「イリオスの誘拐」、あるいは6人がともにシルクハットにステッキという正装でどこかオトナの色気を発しながら歌い踊ることとなった「TOXIC」でも、執事歌劇団の持つポテンシャルがさまざまなかたちで具現化されていたと言っていいだろう。
(ちなみに、執事歌劇団ではダンスのコリオグラフも全てメンバーが決めている模様)
「何度も何度もいっつもいっつも同じことばかり言っているな、とお嬢様は思われることでしょう。
でも、何度も何度も口に出して言うからこそ、これは本当に我々が心の奥に持っている言葉です。
これからも“変わらぬ日々”を…!」(伊織)
そう告げられてから、力強い声で届けられた「Brand new scene」。
さらには、アンコール曲として6人全員がマイクをとり〈貴方の望むこと全て叶えたい 仰せのままに〉と歌い上げられた「magic butterfly」。
優しい歌声とあたたかなホスピタリティというかたちで、全編から伝わってきた執事たちの忠誠心や真心。
それは紛うことなき愛そのもの、だったとも言えるのではなかろうか。
なお、この日のコンサートではアンコール待ちの時間に執事歌劇団の15周年を記念した第16回公演『0/O(ゼロイチ) ~見上げる空は ハルカうららか~ 』(脚本・伊織)に関するティーザームービーが上映されたのだが、こちらはYouTubeの執事喫茶Swallowtail公式チャンネルにおいても公開されている。
お嬢様方におかれましては…もとい、お嬢様方のみならず、彼らに傅かれてみたいとあらたに思われている方々も含めて、ここから15周年という節目を迎えてますますの充実ぶりをみせていくであろう執事たちの華麗なる課外活動には、今後ともどうかご注視をいただきたい。
執事歌劇団のあたたかく誠実なホスピタリティは唯一無二也。
写真:曲渕健太
取材:杉江由紀
2025年2月12日(水)
東京・池袋harevutai
執事歌劇団 Concert 「Tailcoat」
<セットリスト>(1部・2部共通)
★アンコール楽曲
※予定 / 未定と記載のございますイベントタイトル・日程は予告なく変更となる場合がございます。
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