隠者のいおり

ふぅー…
ひとまず終わりにしましょう…。

掃除は心の洗濯になります…

が、やはりこの広さを掃除しきるには
まだまだ時間が必要でございます。

ただ必要最低限はこれで整ったので、
一度大旦那様に報告できますね。
喜んでくださるかな…

ここ数ヶ月、私共は
昼食と夕食の給仕を終えた後、
この場所の掃除を毎日欠かさず行ってきました。

しっかり協力してくれる仲間もいれば、
なかなかそう見えない仲間もいたりして。
大変、大変…と言いながら、
なんだかんだ楽しくやって来た気がします。

気付けば、信頼と絆が生まれていました。
そりゃ、丸一日一緒だった日もございますから当たり前かもしれませんが…

何か一つの物事を協力して成し遂げる事が
こんなにも自分の心境に変化をもたらすものだとは…

さて…下準備はある程度整いました。
大旦那様に次のご指示をいただく事としましょう…

青いバラをたずさえて

燕帰すなどと申しましたら、季違いだろと笑われましょうか。
旅路の果てに、ようやくお屋敷へと帰り着くことができました。
これからは己の足を過信せず、すなおに車を呼ぶことといたします。

お嬢様方、大変お久しゅうございます。
伊織でございます。

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恒例の日誌

椎名でございます。
梅雨も明け、夏の到来でございます。
30度を優に越す日々が続いておりますが、体調など崩されてはいらっしゃいませんでしょうか?
汗をかきましたらこまめな水分補給は勿論のこと、多少の塩分の摂取もお忘れになりませんようにご注意ください。

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夏到来

司馬でございます。
皆さま、お健やかでいらっしゃいますか?
暑くなってまいりました。いよいよ夏の到来でございます。どうぞ体力を落とさぬよう、しっかり三度のお食事をお召し上がりくださいませ。
私は、生来食い意地が張っておりまして、いままで夏バテになったことなどはございません。
まして、この季節にはこの季節なりの楽しみというものもありまして・・・。
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お嬢様への手紙~横浜紀行・壱

我が敬愛せしお嬢様、ご機嫌うるわしゅうございますか?時任でございます。

春も梅雨も何処へやら、世は早くも真夏の装いでございます。
お昼のお使いも命懸けになってまいりました。日陰から日陰へと、陽光に焼かれ
た身体から白煙を上げつつ駆け抜ける日々でございます。
…大旦那様、なぜわざわざ私をお昼のお使いに出すのですか…。

とかく、この季節は体力勝負でございます。
暑さに食欲のわかぬ日もありましょうが、お嬢様がたは太陽ごときに屈服せず、
誇り高くしっかりご飯をお召し上がりくださいませ。

夏の陽射しの下、向日葵のような笑顔を湛えて御戻りになるお嬢様の姿を、お待
ち申し上げております。
その笑顔だけが、私が唯一愛することのできる太陽でございますゆえに。

それでは、この先は例によりて戯言を綴らせていただきます。
どうかお嬢様、この先はお休み前のベットか、退屈な馬車の旅の途中にでもご覧
くださいませ。

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お嬢様への手紙~朝を司る者たち

我が敬愛せしお嬢様、ご機嫌麗しゅうございますか?時任でございます。

つい先日まで、街行く人々は外套の襟を合わせ身を縮めて居られたというのに、
もう既に世は夏の薫りすら感じられるようでございます。
今年の季節は例年にも増して気紛れであられるようですね。まるでお嬢様のよう
…あ、いえ、失言でございました。ごほんごほん。

とはいえ、まだ陽が落ちれば肌寒くなる日もございます。また、急な雨の日もご
ざいましょう。
どうかお嬢様、当分はご面倒でも、肌寒くなられたときに羽織って頂く御召し物
と、傘の御用意は怠らぬようお願い申し上げます。

この季節に生き生きと咲き誇る庭園の華々のようなお嬢様の笑顔は、我ら使用人
の何にも代え難き慶びにございます。

その笑顔が曇る事なきよう、くれぐれも御身ご自愛下さいませ。

…それでは、毎回口喧しい事を申し上げましたが、これより後はいつものごとく
戯れ事にございます。
おやすみ前のひと時などに、ナイトキャップと共にお楽しみ頂ければ幸いにござ
います。

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