すれ違うだけの短い時間

ようやく桜が咲き、春を感じられるようになりました。
しかし花の盛りはすでに限りを見せ始めておりますが、それでも冷たい雨に散らされなかっただけ救いであると考えることもできます。せめて最期は風に舞わさせてあげたいと思うものです。
いかがお過ごしでしょうか、伊織でございます。

最後に青空の下でゆっくりと桜を見ていられたのはいつの事になるでしょうか。
花見と一言に申しましても、お勤めの後にとなるとどうしても夜桜が主となってしまいます。
それはそれで趣のあるものではございますが、灯りの少ない場所で見上げるおぼろげな桜の影は、時にこの世のものではないような、そら恐ろしい雰囲気を持っておりますね。
昼の優しくやわらかな姿と夜に見せる優艶(あえて”幽艶”とでも字をあてましょうか)なふたつの姿がわたくしどもを惹きつける魅力なのでしょうね。

しかし怖い物に惹かれるとは、人の心は複雑な作りをしております。
ホラー映画もまともに見れないわたくしには、賛同が難しゅうございます。

桜の木が緑に染まりはじめると、今度は一初、文目の見ごろがまいります。
その時分には風も花散らしのいじわるに飽き、おだやかで暖かな日よりをお楽しみ頂けることでしょう。待ち遠しいですね。
わたくしも花粉に煩わされる日々から、早く逃れたいものです……。