いまさら申すまでもございませんが、寒いですね。
落ち葉を集めてたき火といういうほど、お屋敷の庭は散らかってはいないようです。
ぬくもりの恋しい季節です。
いかがお過ごしでしょうか、伊織でございます。
「たき火」という歌はご存じですか?
学童の時分に習う歌のひとつでして、
「垣根の 垣根の 曲がり角~」
という歌い出しのものです。
先日、この歌が生まれたという路地を訪れました。
とあるお宅の山茶花の生け垣がそのまま、曲中で歌われているのだそうです。
大きなお宅であるらしく、生け垣の向こうにかいま見える庭は広く、背の高い木々が肩よせ合って日ざしを拒んでいるかのように生えておりました。
曇りがちな日に訪れたためでしょうか、そうした木々の投げかける影がいっそう色濃くうつり、生け垣に咲く山茶花の花色を際だたせているようでございました。
街はクリスマスを前にきらびやかな赤や金で塗り尽くされそうですが、住宅街のまん真ん中、時間の流れを感じさせる家屋に囲まれた路地では、山茶花のうす明るい花色は救いの道しるべのように貴重な色彩でございます。
やさしい色で暗がりの中の帰り道を示してくれる山茶花も、やがて帰っていくのは土の上です。
北風に舞いあげられる花筵を見ておりますと、コスモスよりも桜の字が似合うのに、と思わずに居れないのはわたくしだけでしょうか。
幼いころに教わった歌が、頭の中で再生されては別の曲へとどんどん移り変わっていきます。
たき火はいつか、ちいさい秋へ。ちいさい秋は夕焼け小やけへ。
あの頃、父親のカセットプレーヤーから流れてきたノイズ入りの童謡がよみがえります。