「それは僕の方じゃないか!」
なんとか口に出した言葉は赤子のような喧然たる叫びだった。
こんな僕はきっとクールじゃいられない。
誰もこんなこと望んでいないし、僕だって望んではいないのに。
でも僕だって声を荒げるときもある。
羊だって吼えたくもなる。
羊はいつも被害者であってしかるべきだと笑う狼は、
僕の叫びをさらっと受け流し、知らん顔していた。
カラッポのウツワ。
満ちていた中身はすっぽりと抜け落ち、ただそこにあるのは
透明な抜け殻だけであった。
隣の彼は無傷なのに・・・。
なんでこんな様になってしまったのか。
やり場の無い怒りは気持ちより先に声になり、
とどまることをも抑え切れずに言い放った。
「なんとか言いいたいことがあるなら言ってみなよ!」
「・・・。」
うつむく君。
きっと荒れ狂う僕の態度に言葉も出ないのだろう。
でも僕のほうがずっと傷ついてるんだ!
今は君の気持ちなんて知ったことじゃないんだぁぁぁ!
~5分前~
後ろから聞こえる冷蔵庫の音。
静寂の隙間から聞こえたそれは、
張り詰めたこの場の中心の存在。
扉はゆっくり開かれて、
そこにあるはずの二人の名前。
今あるのは君の名前だけ。
僕の名前はゴミ箱の中。
僕の方が200円も高いのに。
あんなに大切にとっといたのに・・・。
「僕のプリンを返してよ!」
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