わが敬愛せしお嬢様へ。
番外編ではない日誌をどうしようか思い悩み、日々胃を痛める時任でございます。
本格的な夏の到来と共に、真夏の陽光が輝きを増す日々でございますが、以下がお過ごしでしょうか。
時任は日々、黒焦げにならぬように、物陰を伝うように生きております。
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先月・先々月と、拙い腕ながらお嬢様方にカクテルを作らせて頂く栄誉に預かり、光栄の限りに御座いました。有難うございました。
そして、お嬢様方のお優しいお言葉と、大旦那様の御許しのお陰をもちまして、この8月もカクテルをご用意させて頂ける運びとなりました。
『ヘミングウェイ』『エデン』に続きまして、今回ご用意させて頂くのは『グラバー』でございます。
日取りは8月23日(火)でございます。
お屋敷の公式ページにもございますが、今回のカクテルの名は、長崎「グラバー園」で知られる明治初期の英国商人“トーマス・ブレーク・グラバー”氏から頂戴いたしました。
グラバー氏は、日英を主とする貿易の発展に大きく貢献し、日本の酒類製造文化のビジネス化に大きく携わり、そして同時に、明治維新の陰の立役者の一人でもあるという、とてもエネルギッシュな野心あふれる人物でございます。
8月23日は、このグラバー氏が日本の地に商会を開き、貿易の発展に大きな一歩を記した日であることから、今回この日に因ませて頂く事になりました。
さて、グラバー氏が「明治維新」陰の立役者の一人と申し上げました。
それは財政的な支援や、海外からの物資面の支援も大きくございましたが、何よりも、国際的な視点というものを、後の偉人たちに伝えた点にこそ、その立役者たる所以がございます。
伊藤博文を始めとする、長州・薩摩の若者たちの渡英・留学を支援し、日本の各藩が海外との取引を行うのを仲介し、世界の技術と広さを明確に示し続けた人物でした。
中でも特筆すべきは、かの坂本竜馬との友誼でございます。
誰より海外との取引を有用視し、それ以上に自由な外海に恋焦がれた坂本竜馬にとって、グラバー氏は友であり師でありました。
明治維新が成り、国内での仕事が終わったら、ともに世界の海を巡ろうとの約束を、グラバー氏は幾度も述懐していたそうです。
自由に世界の海を巡る約束は、果たされることなく散ってしまいましたが。
此度は、このグラバー氏を始めとし、多くの方が憧れた自由なる大海原をイメージし、カクテルを製作させて頂きました。
カリブ海のラム、南国のココナッツ、欧州のフルーツ、新大陸のリキュールなど、世界各地の材料をピックアップし、甘く爽やかな味を提供いたします。
世界を巡る船旅、壮大なるバカンスを楽しむ気分で、お召し頂ければ幸いです。
ノンアルコール版、逆にハイアルコール版もご用意いたしました。
お好みによってお申し付けくださいませ。
お嬢様の笑顔を夢見ながら、シェイカーを抱えてお待ちしております。