少しだけ特別な夏の日

お嬢様、お坊ちゃま、ご機嫌いかがでしょうか?金澤でございます。

今年の秋の訪れは、まだまだ先のようです。

暑い日が続いておりますので、体調には十分お気をつけ下さいませ。

さて今回は私のある一日のお話を致しましょう。(毎回同じようですが・・)

8月の某日、いつものようにお屋敷のティーサロンでは、お嬢様のお帰りをお迎えす
る為、

使用人一同せっせと準備をしています。

この日私が仰せつかった仕事は、ドアマン!

お嬢様、お坊ちゃまのご帰宅予定の確認、エントランスの掃除、花壇のお花に水をあ
げたり、etc・・

準備が整ったところで時間です。さあ、お嬢様をお迎えいたしましょう!

大扉を開け放ち、スワロウテイルの一日が始まりました。

「おかえりなさいませ」

今日もとても暑い日です。

席のご用意が整うまでどうしてもエントランスでお嬢様にお待ち頂かなければならな
い事がございます。

暑い中お待たせして本当に申し訳なく心苦しく思っております。

お嬢様方はとてもお優しい。

逆に使用人のいちドアマンにすぎない私に労いの言葉をかけてくださる事が・・ 恐
縮です・・

私は大丈夫でございます。当家使用人たる者この位の暑さなどへっちゃらです。

それに私のドアマンの師は『本郷』でございますよ!

ご説明しなくともお嬢様方にはお分かりいただける事でしょう。

今日はお誕生日会のご予定のお嬢様、旦那様が多く、不備の無いようにしっかりと確
認いたします。

「お嬢様、本日お誕生日でございますね、おめでとうございます!」

「後ほどお屋敷内で盛大にお祝いさせて頂きます」

「旦那様、お誕生日おめでとうございます!」

「後ほどお屋敷内で盛大にお祝いさせて頂きます」

執事より先にお嬢様、旦那様にお祝いの言葉を言えるのはドアマンの特権です!

「お誕生日おめでとうございます」

「お誕生日おめでとうございます」

心をこめて・・・

「おかえりなさいませ」

「いってらっしゃいませ」

今日もお嬢様、旦那様の笑顔が見られて一安心でございました。

早い時間のお勤めを終えた私は後を藤原さんに任せ、

同じく勤めを終えた使用人達との談笑もそこそこに

自室に戻りかばんを取ってお屋敷を後にします。

今日、行きたい場所がある。

今日、見たい景色がある。

今日、感じたい風がある。

急いで私の秘密のガレージに向かいそこから車を走らせます。

時はちょうど通勤の帰宅時間、道がかなり混んでいる。

「間に合うか・・」 だんだん焦ってきた私。

途中から高速道路にのり一気に南へ車を飛ばします。

ちょっと出過ぎていた速度に「はっ!」と

「いけない、無理をしちゃいけないんだった安全運転で行こう」

追い越し車線から走行車線へ、大きなトラックの後を付いていくように大人しく運転
します。

空がだんだんと暗くなり始めました。

逗葉新道を抜けた頃はもうだいぶ暗くなっていました。

「こりゃ間に合わないな・・」

R134に出てさらに南へ、目的の場所へはもう少し。

見たかった夕陽は見られそうもないけれど、その場所にもうすぐ着くという喜びが込
み上げてきます。

海に面した駐車場に到着!

車の外に出てすぐ感じる潮風と潮の香り

「やっとこれた・・」

夕陽が残していった空色が凄く綺麗でしばらくボーっと見とれていました。

駐車場の入り口いるおじさんに話しかけてみる。

私「今、日の入りって何時頃でしょうか?」

お「6時半頃かなぁ~でも今日はちょっと雲が出できちゃったね」

私「そうですか、でもこの雲の色がまた綺麗ですね」

お「だな」

車に戻り、かばんから色えんぴつと紙を取り出す

見た景色を絵にしようと思い持ってきた色えんぴつ

景色を見ながら描いてみようと思ったけれど、どんどん暗くなる空に時間が無いと

あわてて写真を撮り、見た景色を切り取ります。

すっかり暗くなった空を見上げると星が出ています。

一番星は金星かな?

さてと、お茶でも飲みに行く事にしますかね!

駐車場からR134沿いを少し歩いた所にあるカフェレストラン。

ディナータイムだけれどお茶だけでも大丈夫か聞いてみると、

若いウエイターさんが「大丈夫ですよ」と言ってくれた。

ウエイターさん「店内は少々混みあっておりますので、よろしければテラスのお席は
いかがでしょう」

私「テラス席の方がいいです」

ウ「ではお好きなお席へどうぞ、ただいままいります」

私「はい」

ウエイターさんがメニューを持ってきてくれ丁寧にお茶の事、スイーツの事を説明し
てくれる。

名物のスイーツと、おお!と思ったお茶を選びました。

お茶もスイーツも美味しかった。本当に美味しかった。

お茶を飲みながら「う~む」とうなったり、

ポットの中を覗き込んで茶葉を確認したり、

カップをひっくり返して「お!ニッコーか」、

などお行儀の悪い私はどう見られていたのだろうか、

どこかの覆面調査員か情報誌のライターか・・・

いやいや実はただの『あやしいフットマン』でした。

ウエイターさんが話しかけてきてくれました!

ウ「今日はお車でお越しですか?」

私「はい、ひとりでぶらりとドライブです」

ウ「いいですね~そういった時間っていいですよね~」

私「こちらのお店にずっと来たいと思っていてやっとこれました」

ウ「それはそれは、ありがとうございます!ごゆっくり。」

などなど・・・

なんだ?なんだ?今一瞬俺ときめいたぞ!

ウエイターさんの笑顔に癒された私がいた!

とっても感じの良いウエイターさんだ!

お店に流れるモダンジャズの音色が心地よい

お店の前を通過していく車のテールライトを眺めながら思う、

このお店に立ち寄ったのは初めてだけれどお店の前の134号線は

多分50回以上は通ってると思う・・

今の時期は船釣りでワラサかな?松輪の黄金サバもいけるかな?

最近行ってないな・・

そろそろ駐車場に戻るとします。

お会計を済ませにレジへ、

先程のウエイターさんとは違う方が

「紅茶お好きなんですか?」

私「はい!自分で淹れたりもするんです」

「そうですか、お飲み頂いたお茶は最近入った物でとても良い物でして選んで頂いて
うれしいです」

「種類は少ないですが良い物だけを・・・」

などなど紅茶トークを!

店長さんっぽい気さくな方だった。

出口ではさっきのウエイターさんが

「ありがとうございました。またいらしてください」

私「ごちそうさまでした」

なんという気持ちの良いお店なんだ!

店員さんもお店の雰囲気も!

また絶対来ます!

駐車場に戻り帰路につく前に今日の日を振り返る。

良い一日だったな~

お屋敷ではいつものように幸せを貰えたし、

この場所に来て良かったし、

ひとりぼっちだけれどこんな誕生日も悪くないな!

海のさざなみの音を聞いているとひとりじゃない気もするし・・

深呼吸をして帰りましょう!

帰りは下道をゆっくりと。

帰りの道中、車を運転しながら大声で・・

「夏の終わりのハーモニー」♪

 

帰ったらみんな誘って酒盛りだ!

柾木執事に奢ってもらおう!

ああ見えて実はすごく優しい柾木執事

誕生日と言えば奢ってくれるはず。。

過ぎ行く時を大切に!

がんばってまいりましょう!!!