旅は道連れ、世は情け。
たどり着いたその場所は、なんとも暖かな土地でした。
あ、打ち上げロケット。
こんなに綺麗な大地を離れてまで、あなたはカラッポの空に
何を求めているのでしょう。
ただ科学の発展はすさまじく、私がここに辿り着いたのも
文明の成せる業のおかげなのです。
過ぎたる力を驕りもせず、もっと慈愛に満ちた生き物ならば、
憎悪は宇宙の隅で、今頃あくびでもしているのかもしれません。
少し話が逸れてしまいましたね。
数時間ボートに揺られたせいなのかもしれません。
ちょっとボーっとしてました。
・・・。
というわけで、何を思ったのか今回は一人でサトウキビを食べに
南西諸島へと足を運んでみました。
見渡す限りの大自然!
こんなにきれいな海は初めて目にしました。
なんというか・・・、月並みな表現だと『エメラルドグリーン』が
一番しっくり来るのかな。
見ているだけで安心する。そんな色をしていました。
目的地へは徒歩で1時間。
現地で何か移動手段を手配すればよかったのですが、あまりに
素晴らしい景色を素通りしてしまってはもったいないと思い、
あえて徒歩を選びました。
目的地の畑に着くころにはすっかりバテてしまいましたが、
不思議といやな気持ちではない。やはり歩いて正解でした。
途中で見た草花や、町の風景を胸に詰め込んだまま、
本来の目的、サトウキビの栽培地へと無事到着。
そのまま盗んでしまってはもちろん捕まってしまいますので、
ここは交渉といきましょうか。
運良く畑には、日に焼けたおじいさんが3メートルはあろう
高いサトウキビの本体を鎌でざくざくと切り倒していました。
「すいません、わたし知人から、ここのサトウキビが一番おいしいと
評判を聞いてやってきたのですが、どうか一本、いえ一かじりでも
構いませんので、分けてはいただけないでしょうか?」
「・・・いいよ。」
外交モードで少しずつ懐柔していこうと思っていたら、
意外とすんなり入手でき、肩透かしを食らいました。
なんだか申し訳なくなってきたので、お返しに当家のハンカチを
プレゼントしました。
どうかそちらで流した汗を拭ってくださいませ。
忘れていました。味の感想。
うん、まあ素材ゆえのダイナミックな味がしました。
これはこれでアリなんじゃないでしょうか。
少々エグ味が気になりましたが、大自然の味はいつだって
そんなものです。
そんなこんなで日が暮れてきました。
夕暮れはいつだって人を悲しくさせます。
私は一人、海の方角を向きながら味のないサトウキビを
まだかじっています。
きっとこんな感じで、私の時間は過ぎてゆくのだと思います。
わずかに残された味をかみ締めながら。
また訪れるであろう明日に期待しながら。
遠くからロケットはそんな私を映すのです。
綺麗な大地とそこに息づく生命を冷静に。
そして永続的に。
ウィーン、カシャ。