タダシイコトバ

お久しぶりでございます。
やや肌寒い朝に目を覚ましますと、目前まで来た秋を実感いたします。
お嬢様も油断して風邪など引かれませんよう、十分お気をつけくださいませ。

さて私、執務がら新人の教育を担当しておりますが、その教育プログラムに敬語の勉強がございます。
普段何気なく我々が使用している日本語。
完璧に使いこなせることが出来るならばそれに越したことはありませんが、なかなかそういう訳にもいきません。
ならば最低限の言葉使いだけでもマスターしておきたいものでございます。

そんなことを考えながら、本のページをめくっておりますと、面白い言葉が横のテーブルから聞こえてきました。

「こちら、アイスコーヒーのお客様~」

散歩の途中でふらりと立ち寄った手ごろな喫茶店で、こんな言葉を発したのはそこで働くホールスタッフの男性でした。

親切に紐解くならば「お待たせいたしました。(こちら)アイスコーヒーでございます。ご注文くださったお客様はどちら様でしょうか?」といった具合でしょう。

しかし額面どおりに読み取るならば
「ご紹介いたします。こちらはアイスコーヒーのお客様でいらっしゃいます。○○様です」

・・・・

人の紹介になってしまいました。

しかも 「お客様~」

言葉が途中で終わっています。
アイスコーヒーさんとは一体誰なのでしょうか?

まぁ、これは面白おかしく想像しただけですので、実際このような解釈になるのかはよいとしましても、正しくない言葉使いであることは明白ですね。

これは最近、「若者敬語」等と言われ非難を受けている言葉の一種でしょうが、何もこういった言葉は若者だけが使っているわけではありません。
ややもすると、比較的しっかりとしたお店に足を運びましても、そこで働く壮年の男性が平然と使っていたりします。
言語学者のある方はこの現象を「言葉の乱れ」ではなく単なる「言葉の変化」だとおっしゃっていましたが、言葉、伝えたい内容の本質を吟味せず機械的に音を発する行為に、やはり少々恐怖を感じてしまいます。

・・・などと、私などがその様な偉そうなことを言ってもどうしようもありませんね。

と、そんなところに別の若いウェイターの一人が私の注文した商品を持ってやってきました。

『・・・・・・・』
「お待たせしました。ジャンボフルーツパフェです。ごゆっくりとどうぞ(ニコリ)」

なんだか救われた気がいたしました。