お嬢様への手紙 ~ 6.5通目

拝啓、お嬢様。時任でございます。
夏もそろそろ終わりを迎え、空に照り輝いていた太陽めもどうやら和らぎを見せようとしております。
太陽を苦手とする時任は、あやうく灰になるところでございました。夏を乗り越えられほっとしておりますが、来年も乗り越えられるかは怪しいものです。
今年のうちに、対陽光シェルターを地下に建造しておくことと致しましょう。

お嬢様におかれましては、今年の夏は如何でございましたか?
お屋敷においては、お嬢様方の艶やかな浴衣のお姿も、幾度か見かけいたしましたが、夏祭りや花火はお楽しみになられましたか?
夏の太陽はいただけませんが、夏の夜は独特の風情があって良うございますね。
夏の夜には魔力があると述べていた作家がいたように思います。魔力…まさにあの特別な時間を言い表すにふさわしい表現でございましょう。
花火の彩りが、祭囃子が、潮の香りが、友人と過ごす特別な夜が持つ、あの独特な夏の夜の醍醐味。
お嬢様にも、かのような魔法の時間が、掛け替えなき時間がお過ごし頂けたのならば、何よりで御座います。

さて、過ぎ行く夏の事は懐かしむだけに致しましょう。
いよいよ秋の到来で御座います。
食欲の秋、実りの秋……その恵みをお嬢様の元に届けるべく、パティシェ・キュイジニエたちが創意工夫を尽くした品をご用意して御座います。
芸術の秋、文学の秋……お嬢様は如何なる秋を過ごされるご予定であられますか?

私ども執事、フットマンたちも。お嬢様が過ごされる季節の一つ一つに寄り添えますよう、
いつでも最高の紅茶と最高の寛ぎをご用意して、お戻りをお待ちしております。

どうか。過ぎ行く夏も、訪れる秋も。お嬢様にとって最高の季節でありますように。