あきらめる

お嬢様、お坊ちゃま。
奥様、旦那様。
ご機嫌麗しゅうございます。
才木でございます。

十月までまいりますと、
いよいよ年の瀬が見えて来る頃合いです。
一年をどう始めるかも重要だと存じますが、
どう終えるかも意識したいところです。
振り返り反省をするというのは勿論、
出来れば楽しかったことや達成出来たことなど、
前向きなことも一緒に思い出していただくと
更なる1年の活力になると存じます。

自分に厳しく、他人に甘く。
美辞麗句ではございますが、
道徳規範的なものに縛られすぎるのも
よろしくはございません。

自分で自分を甘やかすくらいが、丁度いい。
程よく諦めるのも大切です。
ということで、久しぶりに本のご紹介をいたします。

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岩崎ナオコーラ
「あきらめる」

“登山で頂上まで行く? 途中で降りられる?

「『あきらめる』って言葉、古語ではいい意味だったんですってね。『明らかにする』が語源らしいんです」

近所の川沿いを散歩するのが日課の早乙女雄大。
入院中の愛する人との残り少ない日々の過ごし方や、
ある告白をきっかけに家を出てしまった家族のこと、
あれこれと思い悩みながら歩いていると、親子風の二人組に出会う。
親に見える人は何やら思い詰めた表情で「自分の人生をあきらめたい」と言う…。

ふとしたきっかけで生まれた縁だったが、
やがて雄大は彼らと火星に移住し、「オリンポス山」に登ることを決意する…!?

「あきらめる」ことで自らを「あきらかにしていく」――
火星移住が身近になった、今よりほんの少し先のミライが舞台の新感覚ゆるSF小説。”

※あらすじより引用

岩崎ナオコーラさんといえば、
私の中で原田マハさんや吉本ばななさんと
並ぶ、
「作品は知っているが読んだことの無い作家」だったのですが、
(名前の印象が似ているので並べました)
気まぐれに読んだダ・ヴィンチ(雑誌)の
書評をきっかけに拝読いたしました。

タイトルが何となく緩い印象なのがよく、
作品全体も文学的なテーマはありながら、
柔らかく読みやすい作品でした。

大切なことはあれど固執するべきことはあまりない。
成熟者と呼ばれるシニア層の主人公が、
人生の転換点に気づくのはそんなことです。

長く生きるほどに経験が増え、
経験の先には執着がよぎります。
それが良いのか悪いのか。
断じることは出来ませんが、
ひとつの考え方としては面白いのでは、と。

是非ご一読いただければ幸いです。

才木