目を覚ますと雨音が聞こえる朝を迎えることが増えてまいりました。
自分自身に傘をさす才能を全く感じられない能見でございます。
お嬢様、お元気でいらっしゃいますでしょうか。
お屋敷からお知らせがございました通り、今夏は催しが様々目白押し。
私が夏を愛してやまない理由は沢山の思い出ができるからでございます。
思い返したとき宝物のようにキラキラと輝かしいものとなりますように。
ひとつひとつを大切にしてまいりたいという強い思いがございます。
私ごとで恐縮でございますがお屋敷にまいりまして10年が経ちました。
とても不思議なもので、気がつけば10年、という感覚でございます。
しかしながら、いたずらに時間を過ごしたとは私は全く思いません。
今、お屋敷の使用人を志す姿を拝見すると、不意に懐かしさを覚えます。
紅茶やティーカップの知識、そして使用人としての所作や心構え。
短期間で様々なことを学んだなという記憶が脳裏に蘇ってまいります。
それから日々の給仕に尽くしている間に。
季節の催しをひとつひとつ楽しんでいる間に。
執事歌劇団の活動に励んでいる間に。
気がつけば10年が経っておりました。
たくさんの思い出が詰まったティーサロンでの毎日。
私にとりましてそのひとときがかけがえのないものでございました。
お嬢様、どうかこれからもよろしくお願いいたします。
能見