日誌

ご機嫌麗しゅうございます、荒木田でございます。

先日、春の陽気に誘われて、手のひらサイズの図鑑を片手にお散歩に出かけた時のことでございます。
桜の花弁はとうに散り、街はすっかり緑に覆われており夏と遜色ない青青とした風景が広がっておりました。

しかし、春の風物詩と言えば当然桜だけではございません。足元を見やればカラフルな花々が小さくも勇ましく咲き誇っております。
春を彩る彼らに目を向けないのはなんとも勿体無い。
図鑑に曰く、ハルジオン、ヘビイチゴ、スミレ、カキドオシ、シャクナゲ、ライラック……。
上に下に東に西に、360度五感全てで四季を味わうのが日本人としての粋でございましょう。

さてそれでは、私も日本人として春を味わい尽くそうではございませんか。ちょうど足元に白いふわふわの綿毛がぽつねんと佇んでおります。根本からぶちっともぎ取り、口元に運んでフゥッと息を吹きかけました。すると、かわいらしいたんぽぽの綿毛がふわふわりと風に乗って飛び立ちます。
ゆったりと空を揺蕩うかよわいもこもこ。
メルヘンなその様子に、なんだかうっとりしてしまいます。

アラ、わたくし、きっと、とってもロマンチックだわ。

ねぇたんぽぽちゃん、あなたの名前はなんていうのかしら。

セイヨウタンポポ

外来種でございました。
環境省指定要注意外来生物であり、侵略的外来種ワースト100にも名を連ねるインベーダーとのこと。
漢字がいっぱいで強そう。メルヘンの対偶にございます。
それにしても荒木田、不覚でございます。まさか外来種の繁茂に手を貸していたとは。知らぬ間に犯罪の片棒を担がされておりました。しかしもう、こうなっては後の祭り。風に乗った種子たちは元気いっぱいにその勢力図を拡大していくことでしょう。うまく奴らの手のひらの上で転がされたようで悔しゅうございます。

さて。
セイヨウタンポポをはじめとして、日本のみならず世界中で外来種というのは問題になっているようで。その地にはもともといなかった種の、すなわち、外来の生物。元来その地に住んでいた生物の生息領域を脅かしたり、よろしくない波及効果が多々あるとのこと。
そんな外来種問題に踏み入ってみると、動植物に罪はない。真に悪いのは人間なのだ、などという言説をちらほら見かけます。

人類の目覚ましい科学の発展により、世界は小さくなりました。海を越えることも空を飛ぶことも難しくない。然らば、そんな人類の文明に肖って勢力拡大する輩というのは、しかし、諸悪の根源は人類である、という理屈でございます。

こう言った理屈に、なるほど確かにと納得する一方、それは言い過ぎなんじゃないかと思う私もおります。
だって、文明の発展がなければ私は現在の幸福を享受できていないわけでございますから。そして、それらは自然選択の結果生まれたものでございます。ホモ・サピエンスが進化の過程で”自然に”生み出してきた文明という技術を、地球が生まれて以来数十億年紡がれてきた”自然”という枠組みから外すのはいささか傲慢ではございませんか。

イデオロギーの問題でございますから、どっちが正解とかはないのでしょうが。
どっちつかずもまた良しにございます。のらりくらりと不安定でまろやかに、荒木田は素敵な世界を願うばかりではございます。

 

 

 

 

 

というわけで。
きつね。北の国より。
荒木田でございました。