ご機嫌麗しゅうございますお嬢様。綾瀬にございます。
5月にも関わらず夏日が続く今日この頃でございますね。健やかにお過ごしでしょうか。
さて突然ではございますがお嬢様、『アレキサンダー』『マリネ』『プリン』『スコッチ』『タマ』『爺や』『マカロン』『トラ』『マルゴー』『アネモネ』『庭師』『パトラ』『メイ』『テト』これらが何を示すかお分かりでしょうか。なんとなく意図の分かるものもよく分からないものも混じっておりますが、これらは猫の名前なのでございます。加えて申し上げるならば「一匹の」猫の名前でございます。
本日は春の訪れと共にお屋敷にやって来たとある猫殿のお話でございます。
私がその猫殿と初めて会ったのは先日の事でございます。
こうも日差しが眩しいとそれを活用しないのもいかがなものかと思いまして、その日は日向ぼっこを敢行いたしました。
特に本邸の庭園は良い具合に日差しも穏やかで植物の息吹が感じる事が出来ますので絶好の日向ぼっこスポットと申し上げてよろしいかと存じます。
散策しながら太陽を感じるのも良いものでございますが、私はゆったりした姿勢で陽の光を感じたいものですから一計を案じました。本邸から庭園へ続く階段を降りて右にお進み頂くとスズランやジュウニヒトエの花壇の近くに生垣のアーチがございますが、実は順路を外れてそのアーチの裏側に参りますと六畳程度の空間があるのでございます。そこで横になって読書でもと思ったのですがその日は先客がいらしたのでございます。灰色、虎柄の猫殿でございます。自らの前足を枕に顎を乗せて、てろーんと伸びた姿勢でお昼寝をしておりました。その姿のなんと可愛らしい事でしょうか。非っっっっ常になでなでしたかったのですが猫殿の睡眠を妨げるのはマナー違反でございます。その時は心のシャッターを連写させていただくに留めました。
しかしいかに愛らしいとは言え大旦那様のお客様もいらっしゃる場所ですから万が一粗相などされては大変でございます。一応庭師に報告をいたしますと
「人に慣れているしやってはいけない事はしないから大丈夫だよ」
との事でございました。
しかし慣れているが故にお客様に戯れついたりしないでしょうかと申しますと
「この前大旦那様が庭園にいらした時、いの一番に大旦那様のお足元に頭を擦り付けていたよ。その可愛らしさに大旦那様も見事に陥落したご様子だったから取り入るべき相手をよく分かっている賢い子だね」
との事でございました。
素晴らしい洞察力でございますね。野生の勘と言うやつでしょうか。
それ以来主に庭園にて姿を見かけるようになりました。そして心なしか休憩や食事を庭園で取る使用人の姿も増えた様な気がいたします。気になりましたので何と呼んでいるのか皆に聞いてみますと冒頭の様々な名前が挙がったのでございます。
お名前を統一するべきか否か悩みどころではございますが、よろしければお嬢様からもお知恵をお借りしたく存じます。良い名前がありましたら教えてくださいませ。
それでは本日はこの辺りで。
ご帰宅をお待ちしております。
綾瀬