お嬢様、お坊ちゃま。
奥様、旦那様。
ご機嫌麗しゅうございます。
才木でございます。
この度大旦那様より、
ファーストフットマンの任を仰せつかることになりました。
このお屋敷に参りましたのが、六年と八ヶ月前。
別段区切りも良くはないのですが、
こういったことがございますと
改めて今までの事を思い返したくなるものです。
ティーサロンでの
給仕を許されたのは、四月八日。
……惜しいところでございますが、
キリが良いというわけではありません。
はてさて。
洒落た言い回しを考えては見ましたが、
あまり都合もつかずといったところでした。
運命が味方をしてくれるのならば、
などと考えたのは甘えでございましたね。
少しは見れる背中になっていたか。
まず頭に浮かんだのはそれでした。
自信ありと嘯いて
一歩を踏み出したあの日から、
いつも空っぽの自分を奮い立たせてまいりました。
ですからそんな背中が
少しはそれらしく見えるようになったのであれば、
ひとえに皆様の笑顔があったからだと存じます。
卑下するわけでもなく、謙遜でもなく、
当然私が優れているわけでもなく。
支えがあって誇りを持てましたし、
支えてくれた皆様のおかげで今がございます。
この度のこと、
素直に嬉しく存じます。
感謝を忘れずこの先も、
頂いた役目に恥じぬ働きをいたします。
素晴らしい一日をお過ごしいただけるよう、
誠心誠意努めてまいります。
さてそろそろ自室に戻りまして、
祝杯でも挙げることにいたします。
折角ですのでチャムハムくんにも、
付き合ってもらうことにいたしましょう。
本日ばかりは、
夜が遅くなることをお許しくださいませ。
才木