敬愛する藤堂執事へ

私が藤堂執事と初めてお会いしましたのは2006年の夏頃、

まだできたばかりのティーサロンの様子をご覧にいらっしゃった時でした。

 

その時は藤堂執事も70代になったばかり。

私も20代の若者でございましたね。

 

そこで初めて、今後一緒にサロンでお勤めになることと伺いました。

まず驚かされたのは、学ぶ姿勢の素晴らしさでございます。

 

ティーサロンでの勤めにおいて、たった数ヶ月先輩だというだけの私の言葉に真摯に耳を傾けてくださり、

紅茶の知識やカップ、配膳の際の姿勢など、

懸命に取り組む姿を拝見し、70代になっても衰えることのない、

その向上心に大変感銘を受けたことを今でも覚えております。

 

また何かあるごとに私に意見を求めてくださったり、

その働きを認めてくださるお言葉には何度も救われ、

まだ若輩者だった私の「自信」に大きな希望を与えてくださいました。

 

よき仲間として、

人生の先輩として、

またときには息子のように可愛がってくださいました。

 

私は生まれが大阪のため、父となかなか会えない身でございましたので、

「藤堂執事は東京のお父さんだよ」なんて

笑いながら伝えさせていただいた言葉は、決して冗談ではなく、

私の本当の気持ちでございます。

 

語りだすと思い出は、とめどなく溢れて参ります。

他の使用人たちのように、どこかに旅行に行って…

なんて言う事はあまり機会がございませんでしたね。

それでも、ことあるごとに互いにお土産を送り合うのは、

今でも、私の密かな楽しみでございます。

 

ですので、今度はいちど一緒にどこか旅行におでかけいたしましょう。

 

 

あっという間の17年でございました。

勇退の決意を伺った時、

ようやく肩の荷をおろして楽になって頂けるのだと言う安堵とともに、

一緒にモーニングコートを羽織り、

お嬢様を迎えできなくなるのだなと思うと、

途端に胸が締め付けられるような寂しさに襲われました。

 

でも責任感の強い藤堂執事のことでございます。

このご決断をされるまでに、

本当に本当に何度も何度も悩まれたことと思います。

だからこそ、私どもはその想いを尊重し、

誇りと感謝の心で藤堂執事をお見送りしたいと思います。

 

 

‥‥「藤堂さん」

あなたは、執事としての尊厳と品位を持ち、

常に暖かな心でもって周囲を魅了してくださいました。

お嬢様を思いやるその姿勢は、私たちに大きな影響与えて下さいました。

私どもにとってあなたの存在は、まさに光。

太陽のような存在でございます。

 

藤堂執事が示してくださった使用人としての「道」は、

これからもきっと私たちが受け継いで後世につないで参りますので、どうか安心して託して下さいませ。

 

このたびの引退は、藤堂執事の新たな人生の始まりでございます。

これからの人生が充実し、幸福に満ちていくことを心より願っております。

 

改めまして、長きにわたる使用人人生。

本当にお疲れ様でした。

そして心からのお祝いを申し上げます。

 

藤堂さん、大好きですよ。