読書の秋

お嬢様、お坊ちゃま。
奥様、旦那様。
ご機嫌麗しゅうございます。
才木でございます。

月並みではございますが、
秋と言えばやはり読書。
暑さも落ち着き、程よい涼しさがやってまいりますから、
集中して物事に向かうには
ピッタリの季節にございます。

ご多分に漏れず私も、
心地よい陽気に誘われて
本を購入いたしました。
積まれていく未読の物たちに、
遠慮をしないというのがコツです。

ちょうど七月の末に
上半期の芥川賞と直木賞の受賞作が
発表されましたので、
書店では平積みで置かれておりました。

皆様はこの二つの賞はご存知でしょうか?
名前ぐらいは、という方も多いと存じます。

芥川賞は新進気鋭の作家に贈られます。
俗に純文学と呼ばれるジャンルの作品の
短編あるいは中編作品を対象としています。
新人賞というイメージが強いですが、
既刊の作品に対する賞です。
(正確に言うと、半年毎にその時期に発表された作品の中から選考されます)

直木賞はエンタメ作品の賞です。
芥川賞と違って、中堅・ベテラン作家が受賞することが多いですね。
主に長編作品の印象がありますが、
短編集の受賞歴もあるとか。

学生時分は「文藝春秋」や「オール讀物」に掲載されます
講評コメントに目を通していたこともあったのですが、
近頃は、私にとって
縁遠いものになってしまいました。

折角見かけたのだからということもあり、
手に取ってみた次第です。
特に今回の芥川賞は、
候補者全員が女性であったことが
話題になっておりましたので、
私としても気になっておりました。

というところで前段のお話は終わりです。

――

「おいしいご飯が食べられますように」
著:高瀬隼子

ノミネート2回目での芥川賞受賞。
今作は「食事」を通して人を描いた作品。
帯によりますと
「最高に不穏な仕事場小説」とのこと。

なるほど、読んでみますとこの不穏というのが
常に感じられる作品でございました。

当たり前なのですが、
生きていく上で自分の気持ちを吐露することなんて、殆どないですよね。
大半のことはどんなに違和感があっても、
抱えながら生きていくもの。

でも捨てることは出来ない違和感を
いかんともせず感じ続ける登場人物たち。
自分なりの方法で感情と付き合っていく、その姿はまさに不穏。
不確かなバランスで成り立つ日常が、
よく描かれた作品でございました。

あと個人的に面白かったのが、
冒頭数ページの視点の揺らぎ。
次第にピントがあっていくような導入が、
非常に面白く感じました。

――

気づけば冬らしさも出てきております。
皆様もお身体には十分ご自愛くださいませ。

暖かくしてお部屋で、読書。
そんな過ごした方もよろしゅうございます。
新しい季節も楽しくお過ごしくださいませ。