ご機嫌麗しゅうございます、お嬢様。
隈川でございます。
庭園の噴水周り。
緑の薄れた葉を掃いておりますとすっかり夏が終わったのだなぁ、と季節の移り変わりに実感が湧いてまいります。
私事ながら、秋はティーサロンにて執務や給仕を仰せつかるようになった思い入れのある季節。ちょうど10月頃でございました。
ちょうど8年前。
お食事に使われている食材やティーカップ、飾られている調度品、種類豊富な紅茶やハーブ、ワイン。難しいカタカナを呪文のように呟きながら一生懸命お勉強していた当時のことを今でも覚えております。
当時の私はぎこちない所作、震える手で注ぐ紅茶、お世辞にも褒められた使用人ではなかったように存じます。
正直に申しますと、何度も心が折れそうになりました。
「理想の給仕」なんて口にするのも烏滸がましく、使用人仲間たちが給仕を語り合う中、なるべく目立たないよう、その場にいることが恥ずかしく口をつぐんでおりました。
それでも、お役に立てることが少なくても、何か取り柄を作ろうと必死でした。できないなりに努力で補えることは全部やろうとがむしゃらでした。
今の私は8年前の自分と比べてどうでしょうか。
たしかに知識も技術も新米の頃よりは幾分マシになりました。
ですが、あの頃の方が使用人として大切な謙虚な必死さを持っていたように存じます。
滅私奉公。
誇ることなかれ、驕ることなかれ。
使用人として当たり前のことです。
改めて自身を鑑みますと
「自分はスワロウテイルに必要な使用人の1人なのではないか」
そんな恥ずかしい思い上がりが無自覚ながら心の中に生まれていたようにも思います。
9年目を迎えるこれを機に初心に立ち返り、もっと必死になることにいたします。
全力でお嬢様のお役に立てることを見つけられるように頑張ります!!
見ていてくださいませ、お嬢さ、
…え?掃除の手が止まってる…?
…そういうところがよくない?
し、精進いたします。
隈川