敬愛せしお嬢様へ
早くも暦は2月となり、月日の経つ早さに毎度驚いてばかりでございます。
お外の寒さも厳しくなって参りましたゆえ
大旦那様の御指示のもと、2月のマンスリードリンクとして「ホットショコラータ」をご用意致しました。
当家としてもホットショコラータのご用意は始めてで、お味の調整たる大役は緊張致しましたが、
皆も協力を得てどうにか完成に漕ぎ着けることができました。
甘さ控えめのチョコレートを選びまして、コクを出すために濃厚に入れたエスプレッソを合わせ、
ラズベリー・クランベリーなどのフルーツを煮詰めて、隠し味はほのかな甘味のマスカット果汁とアニスでございます。
ホイップクリームを表面に溶かして口当たりを整え、アルコール入りはブランデーを浮かべて香り付けを行いました。
ぜひお召し頂ければ幸いでございます。
甘いものがさほど得意ではない時任でございますが。
チョコレートとは多少の縁がありまして。
遥か過去、少々体調を崩し、体が食べ物を受け付けなくなり、自宅に居ながら食料が採れないセルフ遭難状態に陥りましたとき
ふと、登山家の友人から聞き齧った「いざというときはチョコレートが一番生存率が高い食べ物なんだ。」という言葉を思いだし。
もそもそとチョコレートを探しだして口にしてみたところ。体が受け付けてくれて。そこから一気に体調が好転した経験がございます。
体調もさることながら。
あやうくセルフ遭難して瀕死になり折れかけていた心にその甘さはあまりにも優しく。
「チョコレートの甘さは、幸せを感じたときの心の動きと同じものだ。」
という某パティシエの言葉が実感としてよく理解できたのを覚えております。
もちろんお嬢様は決して遭難などしてはなりませんが。
この一欠片の幸せを、暖かさを。
お嬢様の寛ぎのひとときに添えることができたら。
そんな願いを込めて、レシピを編み上げました。
春の暖かさ、優しさを想う
「春待ちのブランデーショコラータ」
ぜひ、お召し上がりくださいませ。