卯月。何やらお腹が空いてくる響きに感じるのは私だけでしょうか。
早くお嬢様とお坊ちゃまの元気なお顔を拝見したい能見でございます。
お嬢様、お元気でいらっしゃいますでしょうか。
また春という季節が到来しました。この季節になると思い出します。
私が浪花から東京へと参りました日。幾年も以前のことにございます。
バイクで西から駆け抜けた二日間。季節は三月の上旬でございました。
途中までは渋滞に巻き込まれながらも順調な旅路に思われました。が。
当家きっての雨男。なかなか順風満帆にはいかないものでございます。
伊勢湾岸自動車道を超えたあたりから雲行きが怪しくなり、遂には雨。
ご想像の通り、バイクは外的環境変化には滅法弱い乗り物でございます。
結果論として無事だったから良かったものの、即時停車すべきでした。
凍えながら見た夜の浜名湖、その深淵に吸い込まれそうになりました。
時間を追うごとに強まる雨足。孤独と寒波に震えながら東へとひた走り、
針が天井を指す頃、心身ともに限界を感じ、ホテルへ逃げ込みました。
迎え入れてくれたコンシェルジュの表情は、今でも忘れられません。
翌日早朝に出発し、愛車と共にまた東名高速を使って東へ向かいました。
昨夜とは打って変わって快晴。水たまりに反射する太陽が煌びやかです。
サービスエリアで頂くコーヒーは何故あんなにも美味しいのでしょうか。
夕刻には首都高速に入り、高層ビル群を見てただただ圧倒されました。
こうして二日間にわたる能見の長距離ツーリングは無事幕を閉じました。
何年も前のことです。ただ、私の記憶に確かに残っている大切な思い出。
お嬢様、失礼いたしました。少し昔話が長くなりすぎてしまいましたね。
立ち止まって過去を振り返られる位には、私も大人になったでしょうか。
能見