ゴールデンウィークもお仕舞い。楽しい思い出は沢山出来ましたか?
緑道の木漏れ日の下で、ゆっくりグラスを傾けたい能見でございます。
お嬢様、お元気でいらっしゃいますでしょうか。
新年度も一ヶ月が過ぎ、そして気が付けば、新時代を迎えました。
大変お恥ずかしながら、新しい年号という実感もなかなかに少なく、
令和生まれのお嬢様やお坊ちゃまとお会いする機会がありましたら、
もやっとした気持ちにも、少しは変化が生じるのかも知れませんね。
ワインカーヴへと足を踏み入れる機会が以前に比べて多くなりました。
毎日毎晩のように夜遅くまで聴こえておりました、ペンを走らせる音。
暫くはインクの香りと共にずっと耳に残っていることでございましょう。
私にとっての学びの場所。これからは学びを伝えていく場所になります。
今夜は非常に珍しく、長野「塩尻」の赤ワインを手に取ってみました。
「令和」を感じたいという気持ちが、恐らく心中であったのでしょう。
日本ワインらしい、優しく包み込んでくれるようなひとときでありました。
こういった考えるための時間を過ごすのもたまには悪くのうございますね。
窓を開け放ちますと、涼しい夜風が入って参りまして心地良うございます。
季節の移り変わりに情緒を感じるのは、思い出がそうさせるのでしょうか。
幾度も幾度も。私は沢山の季節をこのお屋敷で迎えたいものでございます。
麗らかな春も。大好きな夏も。情緒的な秋も。そして寒くて大嫌いな冬も。
不意に突風が吹き、デスクに置いておりました書類たちも宙を舞いました。
木目の床へと散乱致しましたその中に。馴染みのある一通の封書が。
――なるほど。左様でございますか、大旦那様――
お嬢様。空が瑠璃色になる前には戻ります。お早めにお休み下さいませ。
能見