お嬢様、お坊ちゃま。
奥様、旦那様。
ご機嫌麗しゅうございます。
才木でございます。
お屋敷のバレンタインといえば、
バレンタインサロンなどもございました。
とはいえ日本流のバレンタインですと、
基本的には私達の出番はなく、
常に変わらずお務めするのみですが、
折角のイベントでございますし、
古今東西見渡せば、
そもそも男性が何かをするものですから、
ここは一つ私も、何かをしたいなと考える訳です。
私、同期に浪川と佐々木がおりますが、
使用人宿舎では、同部屋をあてがわれておりまして、
何となく、そんな皆を伝えてみたのでございます。
私「折角だから、何かないだろうかね」
佐々木「チョコは食べたいですけどねえ」
浪川「何かって言っても難しくないですか?」
佐々木は甘い物が好きです、
ですけど、作るのは苦手です。
浪川はこのような時、客観的です。
私「それを考えたいんですよ、ほら女性の方だと友チョコとかあるじゃないですか、ああゆうのは」
二人共、何が楽しいのか、といった顔です。
私「チョコ嫌いですか?」
二人「才木くんのは別に、いらない」
私「悲しいです」
私も、あげても、
殊更楽しい気はしませんでしたから、
この案はなしになりました。
私「他になにかありますか?」
佐々木「インスタ映えするのがいいと思うんですよ」
佐々木の流行語です。
インスタのことはよく分からないようです。
私もよく分からないのですけど。
私「例えば?」
佐々木「そこは……浪川くんが」
浪川「綺麗で可愛い……とか?」
答える誠意は、素晴らしいですね。
私「何か抽象的ですね、具体的に何をするのか決めないと」
佐々木「才木くんが考えてくださいよ」
私「ぐう」
そもそも私は何がしたいのでしょう。
浪川「明日もお勤めがあるから、私は、寝ますね」
佐々木「それもそうですね、そうしましょう」
私「何かやりましょうよ」
佐々木「才木くんが、決めたら、それにしましょう。じゃあ、後はお願いします」
浪川「お願いします」
任せられてしまいました。
ただ、三人集まって、決まらなかったことが、
一人で決められるはずもありません。
本でも読みながら、そのまま眠ってしまおうと思います。
何となく過ごすというのも悪くないですし、
気は置けませんから、
何となく楽しくはなるでしょうから。
何とかはなるでしょう。
使用人らしからぬ、コメントではありますけども。
ああ、バレンタイン。
何か面白いことが、あればやってみたいですね。
後は、春が駆け足で、
参りましたら、なおよいところです。
早く来い来い、春よ来い。
才木