皆さま、お健やかでいらっしゃいますか?
唐突ではございますが、起床した執事が身支度を整え、まず最初に行う仕事はなにか、ご存知でございましょうか?
実は、執事の朝一番の仕事とは、大旦那様がお読みになる新聞にアイロンがけをすることなのでございます。
これは、英国の執事専門学校でも、まず最初に教えられることなのでございますが、もともと、新聞に使われる紙は上質とはいえませんでした。現在では、そのようなことはございませんが、届けられた新聞は皺だらけだったのでございます。
そのため、気持ちよく主に読んでいただくためには、アイロンがけをする必要がありました。英国式の風習を受け継ぐ当家でも、この仕事は執事の重要な職務となっております。
さて、私はこの仕事について、一つの楽しみがございます。
当家で購買している各紙には、運勢欄を掲載しているものがいくつかございます。アイロンがけをしつつ、それを横目で見ながら、私は秘かに本日の運勢を占っているのでございます。
いま、手元に広げている新聞には干支占いが載っております。これは、なかなか興味深いものでございます。と、申しますのも、私は一月生まれでございますので、通常の干支の欄ではなく、旧暦にしたがって前年の干支の欄を参照しなければならないのでございます。
ですが、心配性の私は、ついつい気になってしまって、いつも両方に目を通してしまうのです。
「財貨多ければ、災いを招く」
これは、前年とした場合の運勢。
「本日、商談に注意」
これは、通常どおりにみた場合の運勢でございます。
はてさて、どっちにしても懐の具合には要注意ということでございますか。やれやれ・・・。
占いもあまり気になさいますと、過ぎたるは及ばざるがごとしでございますが、どうか皆さまの運勢が、いつも良好でありますように。
それでは、このあたりで失礼いたします。