薬研って、ご存じですか?

茶の花が咲く季節となりました。
学名カメリア・シネンシス――花をみると、なるほど椿に似ており、椿科の植物であることに納得がまいります。
いかがお過ごしでしょうか、伊織でございます。

さて、お嬢様は薬研(やげん)をご存じでしょうか?

時代劇などで医者が薬をゴーリゴーリしている、アレのことでございます。
百聞は一見にしかず。
こちらが薬研です。

薬草を砕き、混ぜ合わせるための道具として使われる道具でございます。
ふと出会ったこの薬研とともに、薬ではなくハーブティーを作ってみようと思います。
道具が道具ですから、ハーブティーではなく「薬草茶」と呼びましょう。

材料も普段とは違ったものを使います。
今回は……

・カキドオシ
・スギナ
・赤シソ
・クコ
・レモンガヤ

の5種を用います。
使う分(1ポット分)を薬包に取ります。

なんだか見慣れた葉っぱが半分くらいを占めています。
左様でございます。レモンガヤはお屋敷でもおなじみレモングラスの和名です。
見知らぬ材料に臆病になったわたくしの命綱みたいなものでございます。

さて、そのほかの材料ですが、カキドオシはシソ科の植物であり、赤シソと近しい香りをもっています。香川のブレンドティー「いいあんばい」のイメージもあり、使ってみることといたしました。
スギナはツクシの葉っぱ部分です。とりあえず口にしたことがないので手に取りました。

さあ、クコ以外の材料を薬研にいれてゴリゴリします。
手に持つ柄の部分と金属の輪は固定されておりません。ゴリゴリする度に位置がずれて手を打ったり、うまく力を入れるのが難しかったりいたします。
これはなかなか難儀でございます。

どうも入れすぎたレモンガヤのせいで思うように材料がすりつぶせません。
レモンガヤの硬さが憎らしいです。

藤原の「ジャンヌダルク」であれば、すりつぶさなくてもこの大きさで十分おいしいことをわたくしは知っています。
本来なら15分くらいゴリゴリするらしいのですが、3分くらいでゴリゴリは諦めました。
結果がこちらです。

彩りにクコを添えましたが……薬包上のほとんどがレモンガヤで染められています。
ちょっと配分を怖がりすぎたかもしれません。
いやな予感がします。

何はともあれ、生まれて初めての薬草茶が完成でございます!
早速試飲してみましょう。

……よく知った味がします。
これは間違いなく、レモングラスティーです。
シソの香りが暖簾の向こうから控えめに覗いておりますが、やっぱり間違いなくレモングラスティーでございます。

怖がりすぎて無難なものができてしまいました。
初めての薬研体験は失敗……なのでしょうか?

しかし、わたくしは見つけてしまったのです。
材料を並べた机の先、あまりにも興味深い、存在感たっぷりのその材料を。