古谷でございます

グラスはシャンデリアから零れる光を跳ね返さんとばかりに、ひとつずつ丁寧に磨きあげられてございます。

酸味と甘み。ふたつのバランスが均整に整えられたその様は、まるで身に纏うドレスの様にとびきり贅沢で。

そして表情は貴女のご気分に合わせて何色にも変えられる事が出来ます。

楽しい時はより華やかに。

寂しい時はそっと寄り添うように。

鮮やかに仕上げた虹彩を、その瞳の奥に映して頂いて、

ほんのすこし酩酊の世界に誘うこの甘美なアロマを吸い込んで頂き、

乾いた喉を潤して、

最後は空になったグラスに残る余韻を受け取って下さりましたら、

お席を立ち上がるその瞬間、すこしだけでも元気になって頂けたら、これ以上の喜びはございません。

3月バースデーカクテル。

ご提供日は来る24日。

大旦那様よりご用命を受け賜わりました。

この日、ティーサロン スワロウテイルは11周年を迎えます。

記念すべきこの偉大な日に、果たして見合うのかはわかりかねますが、新しい一年を祝う、新たな幕開けに添える事が叶いますような、そんな特別なグラスを必ずご用意させて頂きたいと存じます。

私は思うのです。

カクテルが魅せてくれる、妖艶であり美しいこの景色。

お酒が好きでも仮にもしそうでなくとも。

如何なる時であっても冒頭で述べたようなこの素晴らしき世界が、当家のお嬢様にきっとお魅せできると信じております。

本日は上手に伝えられたかはわかりませんが、是非とも当日その目で確かめて頂きたいと存じます。

一年前、時任執事から襲名した当家バースデーカクテル。お作りします12番目のグラス。ひとまず最後の締めくくりの舞台は、格式高いこの記念日にて、僭越ながらお帰りをお待ちしております。

ただの一杯のグラスにどうか、グラス以上の「おもい」をのせることが出来ますように。

古谷