ダメなものはダメ

おばけはキライです。
怖いですから。

お嬢様方、いかがお過ごしでしょうか。
伊織でございます。

肝を冷やすという言葉がございますが、怖い思いをして肝を冷やしても体温は下がりません。
そうは思いませんか?
確かに『ぶるっ』と身震いすることはございましょうが、だからといって涼しくなるとは考えられません。
なのになぜ、人は肝試しをするのでしょうか?
理解に苦しみます。

お嬢様は、どうか自ら危険や恐怖に身をさらして興に入ることなどございませんように。
無病息災、悠々閑々な毎日こそが大切なのです。

ですから、お願いですからわたくしを肝試しには連れ出さないでやってください。
そういった催しでしたら、桐島や時任執事の方がよっぽど助けになりますから、どうかご容赦下さいませ。

え? 泣き顔が見たい?
でしたら八幡と生駒を差し上げます。
きっと……いい仕事をしてくれることでしょう。

では、わたくしはこれにて失礼いたします。
なにぶん書き物がたまっているものですから、机の前から離れられないのです。
申し訳ございません。
本当に申し訳ございません。
ではっ!