ご機嫌麗しゅうございます、お嬢様。
隈川でございます。
突然ですがお嬢様、私の部屋には妖怪が住み着いております。
その名もゴチャマゼクロイクツシタ。
我々使用人は毎日黒い靴下を着用して給仕に臨みます。それはそれは真っ黒な靴下でございます。
とはいえ、黒一色の靴下にも様々なメーカーの品、縫い目の異なった品などがございまして、朝方お仕着せに着替えようとすると…
…なぜか同じ種類の靴下が見つからないのです。
それを嫌って一度全て同じメーカーの品に買い替えて統一したこともあるのですが…
やはり、揃いません。
不穏な気配が部屋に漂っているような気さえ致します。
古来より日本に存在する、枕を返すだけの妖怪だの、ふすまを少し開くだけの妖怪などと比べますと、この妖怪の恐ろしさたるや。
私はこの妖怪の被害に遭い、急いでいる朝に暗い部屋で靴下を履き、両足の丈が全く違う靴下を履いてしまったこともございます。
海外では12月末に靴下を一足枕元に提げて、この妖怪を鎮める儀式があるのだとか。
他の使用人たちに話しますと同じように苦しめられている者も少なくはございません。
もしかすると、お嬢様のお部屋にも…。
隈川