黒い飴

ご機嫌麗しゅうございます、お嬢様。
隈川でございます。

杉、ひのきの花粉にやられ意識朦朧の日々を過ごしております。
ごほんごほん、へっくしょん。
鼻、目と喉を取って丸洗いできたのならばどれだけ爽快でしょうか。

さて話は変わりますが、最近少し変わった飴を入手致しました。その名を『サルミアッキアメ』と申します。

見た目だけであれば黒く小さく一般的なアメとさほど違いはございません。

では、何がそんなに変わっているかと言いますとこのアメ『不味い』のです。

大切なことですのでもう一度申し上げます。

このアメ『不味い』のです。

フィンランドでしか販売しておらず、リコリス、塩化アンモニウムを主な原材料とする世界一不味いことでしられるアメ『サルミアッキアメ』

以前から気になっていたのですが今回ついに国外から個人的に取り寄せてしまいました。いったいどれほどの不味さなのでしょうか。

まずは一粒いただいてみます。
ぱくっ。
口に入れて最初のうちはそれほど強烈なインパクトはなく、塩昆布のような塩気と酸味を感じます。なんだ、この程度か拍子抜け…

などと油断した瞬間。
吐き気にも似た不味さが口の中に溢れ出します。

これは酷い、想像以上でございます。
舐め終わる頃には少し具合が悪くなっておりました。

お嬢様、アメ一つで人間はここまで辛い気持ちになれるのですね。

貴重な体験でございました。

…本来ならばここで終わらせたいところなのですがそうはいきません。
実はこのアメ、一箱におおよそ4、50粒入っているのです。しかも、取り寄せたときは夜中だったこともあり勢いで3箱も届いております。

150粒…


正直もう食べたくないアメとにらめっこした結果サルミアッキアメを他の使用人たちにもプレゼントすることに致しました。

そこからはあっという間でございます。

顔を合わせた使用人にどんどん配っていきます。

使用人たちの顔がどんどんと曇っていきます。

使用人たちがどんどん犠牲になっていきます。

先輩、後輩、ファーストフットマン、執事、セカンドスチュワード、ハウススチュワード。
誰彼構わず配りました。
シェフにも配りました。

まるで季節外れのサンタさんですね。

みんなからの視線が少しだけ鋭く強くなった今日この頃、お屋敷は今日も平和で、私は今日も元気です。

隈川