あこがれの飲み物

季節の変わり目でございます。天候も気温も変化が著しい今日、いかがお過ごしでしょうか。
伊織でございます。

幼い頃、憧れた飲み物がございました。
それは残念ながら紅茶ではなく、アルコールのひとつでございます。

ラムでございます。

当時好んで読んでおりました、年少向けの文学集に収められていた作品が大きく影響してのことでした。
その作品はと申しますと、スティーブンソンの「宝島」でございます。

登場する海賊たちが口にするラムという言葉の中に、未知の世界に住む荒くれ者たちを魅了する計り知れない魅力があるのだと感じたのです。
何でも手にできるような荒くれ者が認める逸品ですから、まさに極上の酒であり、世界で一番おいしいものなのだろうと想像していたのでございます。

そんな憧れを持って成人し、とうとうラムを口にする機会が訪れました。
しかしその味は……わたくしの好みからはちょっと外れておりました。
想像していたものが洗練されすぎていたのか、そもそも酒の味を知らない少年が想像する酒の味というものが現実離れしていたのか、ともあれ、少なくともスピリッツならジンかテキーラの方が好みであるという結論にいたるのでした。

今でもビバレッジユニットの酒蔵でキャプテンモルガンのラベルを目にする度に、当時わくわくしてラムの味を想像したことと、初めて口にした時の衝撃を思い出します。

それはそうと、やはり海賊は野卑で粗野で汚らしくて、でも彼ら独特の信念を貫いているという姿が好みです。
おしゃれで男前でどこかヒーローじみた姿は、初めてラムを口にした時のように、「宝島」の世界に憧れたわたくしにはどうしても馴染めないようです。