敬愛せしお嬢様
世の桜は碧々と葉を広げ、初夏の息吹すら聴こえる昨今でございます。
そんな時に何でございますが、桜を見てまいりました。
お役目を終えての夜。
ちょっと良い銘酒を片手に、使用人たち連れ立ってのごく僅かな時間のお花見でございました。
夜空に浮かぶ桜はとても美しく、闇を背にぼうっと輝いているように見えました。
なぜこんなに綺麗なんでしょうね。と使用人の一人が呟きました。
ほんのひとときの美しさだからこそ・・かな。と一人が呟きました。
どんな寒い冬も、どんな厳しい嵐も乗り越えて咲くから綺麗なんだよと、執事が教えてくれました。
皆が信じてくれているから、どんなに厳しい冬も乗り越えて、きれいに咲くのだと。
皆信じています。
来年もその先も、どんな寒い冬も乗り越えて、綺麗に咲き誇ってくれると。