実は先日、私の枕元にどなたかからの手紙がございました。
開けて読んでみると…
『バレンタインの贈り物は貴方に任せました 伊織』
なんと…
いつも私のリボンを結んでくれたり、気付かないうちにシャツのボタンを直してくれたり…
そんな支えてくれている伊織の頼みであれば、頑張らないわけがございません。
…それにお嬢様にも普段の感謝の気持ちがお届け出来る機会。
なかなか無いチャンスでございますので考えました…。
考案したアイスは黒蜜きな粉でご提供したばかり…。
オリジナル紅茶。
…も、良うございますがよりチョコレートが濃厚に表現出来るもの…。
ケーキ!
これしかございません!
…しかしながら私チョコレートケーキはさほど口にした事がないのでございました。
そういえば…
私とほぼ同じ時期にお屋敷の門を叩いた、仲間のフットマンがおりました。
彼はチョコが大好きでございました。
そんな彼の誕生日。
私はチョコレートケーキ を探しました。
新人だった私は一人の使用人の為に当家のパティシエの手を煩わせてしまうのは良くないと思い、
色々なパティスリーをまわったのでございます。
何件もまわり、ようやく見つけた一つのケーキがございました。
チョコレートケーキにあまり反応しなかった私でしたが
「これは美味しい!!」
…と驚かされたケーキでございました。
もちろん仲間の彼は特に喜んでくれました。
しかしながら…
またあの味を確かめたいと思いそのパティスリーに向かうと
『閉店致しました』との立て札…
ですが、私感動した味は二度と忘れないという昔からの習性がございましてその記憶を元に
再現させてみました。
ああでもない、こうでもない、とパティシエと伊織に相談しながら
出来上がりました。
バレンタインの期間のみではございますが
シェフに何度も作り直しをお願いしてようやく完成したケーキでございます。
バレンタインという記念ではなくとも
チョコレートをさほど好みでない方も
よろしければ召し上がってみてくださいませ。