チリ チリ チリ チリ
チリリ チリリ チリリ チリリ
チリリン チリリン チリリン チリリン
ジリリリリリリリリリリ
「パシ!」 zzz…
zzz…
ジリリリリリリリリリリリリリリリ
「パシッ! わかったわかった起きますよ…」
「あと5分…」
ジリリリリリリリリリリリリリリリリリリリ!!!!!
「パシ! ごめんなさい起きます…」
そんな爽やかな朝のこと…
私は誰よりも早く起きてする事があります
金澤 「おはよう、調子はどうだい?」
田 「 ブルル 」
金澤 「さあ今日も元気に行ってこような」
田 「 ブルル 」
闇に包まれていた景色が、東の空から変わり始める
森の木々が私の目にもその全体を紫色の世界で見せるようになり、
やがて空は青白赤のグラデーションへと変化する
そろそろ太陽が顔を出すでしょう
私はこの時間が好きです
あと数時間後には多くの人々が行き交う道も今は独り占め
早起きをするとなんだか得した気分になります
金澤 「よし行くぞ!」
田 「ブルル!」
お屋敷の裏山を越え、となり町まで
毎朝この峠道を走り、求めるのは 『藤原とうふ店』(注1) の出来たて豆乳!
注1…伝説の職人がいるこだわりのとうふ店。
当家のハイトーンボイスの癒し系ナイスフットマンの藤原さんとは無関係です
美容と健康に良い豆乳!
毎朝お嬢様にお飲み頂く為、私は荷馬車を走らせ買出しに行ってまいります。
かく言う私も毎日、健康とアンチエイジングマイナス五歳を目指し愛飲している次第でございます。
あっ!ご紹介が遅れました
さっきから「ブルルブルル」言っている者は当家の馬でございます!
司馬 「なんだい?呼んだかい?」
金澤 「いえ呼んでません 司馬さん早起きですね、流石です」
春馬 「お呼びですか?」
金澤 「いえ呼んでません もうちょっと寝てなさい」
え~っと、その名は、いつも私と一緒に荷馬車を牽き出かける馬の『田吾作』でございます。
当家にはたくさんの馬達がおります。
いつもお嬢様と乗馬の時間を過ごすリチャードやエリザベス、クラレンスなどの花形の馬達、
そんな馬達の影に隠れるように馬小屋では二頭ならんで大人しくしている与太郎と田吾作
時は遡り私がお屋敷に来た頃…
馬の世話係を仰せつかい先輩フットマンと一緒に馬小屋に行った時のこと、
馬のカッコ良さに見惚れていると、端っこになんだか冴えない二頭の馬が、
私がその馬達をじっと見ていると、
先輩 「気になるかい? 名前はこっちが与太郎、そっちが田吾作っていうんだ」
金澤 「なんですかその名前!」
先輩 「うちに来た時からもうその名前だったんだよ」
金澤 「へー」
先輩 「こいつらはな、半年ほど前に椎名執事が乗馬用の馬を買い付けに大友牧場(注2)に出かけたときに連れて来た馬なんだよ」
注2…知る人ぞ知る競走馬も育てる小さいながら業界に名を轟かす牧場
メガネのロボット『AUTO-MO』のモデルになった当家のフットマン大友さんとは無関係です
その時の話…
血統の良い見栄えのする馬達の中に、あきらかに見劣りのする二頭の馬
聞けばなかなか買い手が付かずにずっとこの牧場にいるとのこと…
いつの間にか、ひやかしに来る近所の子供たちに与太郎と田吾作という名を付けられていたとか…
でも当の馬達はその名を気に入ったようで、呼ぶとよろこんで反応するのです。
与太郎と田吾作がじっと潤んだ目で椎名執事を見つめています…
椎名執事もその二頭の馬の目を見つめていると、どこからか…
「どうする? スワロォ~♪」
脳裏にどっかで聴いたようなメロディーが流れたようなと…
こいつらはスワロウテイルでしっかりと育てればきっと力を発揮するだろうと…
そうしてこの二頭の馬はお屋敷にやってきました。
現在に戻り…
スワロウテイルで育てられた与太郎と田吾作
椎名執事があの時直感的に感じたこの馬達への期待は見事あたり!
今ではお屋敷に絶対必要な立派な馬になりました!
与太郎は、お嬢様の乗馬のお供に活躍しております
そのやさしい性格はまだ乗馬をはじめたばかりのお嬢様をそっと助けてあげるような良い馬です!
田吾作は、乗馬の馬としての役目もこなしますが、その力強さから馬車を牽くのが得意です!それはそれは安心感のある馬です!
・・・・・・・
何事においてもそう、物事を上っ面で判断するのではなくその中身を見る
また、今はまだでもその先の可能性を見る、とっても大切な事だと実感します。
・・・・・・・
与太郎と田吾作
お屋敷ではその名を信頼と愛情の意を持ってそう呼んでいます…
さて、話が私の打つバンカーショットばりにそれてしまいましたが、
お屋敷に戻る道中、峠の走り馬『田吾作』と共に考える…
金澤 「ホワイトデーに合わせお嬢様にどんな物をお渡ししようかねぇ?
やっぱりスイーツ系がいいよね!」
田 「 ブルル ブルル 」
金澤 「何? お前も何か贈りたいだって?」
田 「 ブルル ブルル 」
金澤 「じゃあ一緒に何か考えよう…」
田 「 ブルルゥ… 」
金澤 「 そうだ!おまえをモデルにしたケーキはどうだ!」
田 「 ブルル! 」
金澤 「そうか、それでいいか、じゃあいいの思いついた!
いつも運んでいる豆乳で!それとヘルシーな米粉を使いココアのスポンジってどうだ!」
田 「ブルル ブルル! 」
金澤 「 よし!善は急げだ、帰って早速パティシエのみんなに相談だ!いくぞ!」
田 「 ヒヒーン! ブルル 」
『 彼方からの風 』♪を送りつつ、
今日も力強く走る田吾作と共に。。