ケースとケーキ その弐

心配事があるとなかなか寝付けない百合野でございます。

もし、私の知らない所で自身の作品が出来るのは嫌だ…。

そんな思いがめぐっておりました。
すると突然、自室のドアを叩く音が…。

先ほどのパティシエが嬉しそうにエクレアを手に持っておりました。

「見てください!完成しました!!これならきっとボリュームもありますし…」

心の声(…良かった。一応確認させてくれるんだ…どれどれ…?)

「え!?」

(おおきぃ…!!!本当に私の眼鏡ケースと同じ大きさ…。
し、しかも、クリームもたっぷり…。)

百「あの…、これじゃ生地だけでお腹いっぱいになっちゃいませ…」
パ「そうですかね!?
大は小を兼ねるって言うじゃないですか!これで行きましょうよ!」

(まだ言い終わってないのに…。それになんの根拠でそんなキラキラした目で自信いっぱいなのだろう…。)

百「あ~…。でもお嬢様、小食でございますから…」

パ「そ、そうですか…。味は!?どうですか!?」

(美味しいけど、眼鏡ケースのエクレアっていうだけじゃなんだか、オリジナリティーにかけるなー…)

百「そうですね、このままだと普通のエクレアなので…」

パ「ですよね!これじゃ、まるで百合野さんがただのメガネの人って事になりますからね!!」

(そうそう…これじゃただのメガネの…って  この人失礼…泣)

百「なのでこのクリームを私の好物の
紅茶味で仕上げてみていただけますか?それとメガネはより黒緑がいいのでビター系でなるべく黒く仕上げていただけますか?味的にもその方がクリームとバランスが取れますので」

パ「良いですねー!だんだんオリジナルらしさが出て来ましたねー」

(初めはこのまま出そうとしてたくせに…)

百「それでもう一度試食させてくださいませ。間違ってそのまま提出しちゃダメですよ?」

パ「ぇ…。間違えない様に気をつけます…」

(…すごく不安…)

翌日

心配なので調理場へ向かいました。

パ「出来た!これなら百合野さんテイストで間違いないですね!」

(…エクレア生地の中にオレンジと紅茶クリームか…美味しそう。)

百「いただきます!」

ん…?

これは困った…。

…オレンジの味が強くて紅茶の味が消えてしまっている。

でも、彩りは綺麗だしサッパリ感としてはオレンジが最適だ…。

パ「じゃあ、これで行きますね!」

百「あ!ちょっと待ってください。これだと…紅茶の味が楽しめないのです…」

パ「え~、じゃあどうします~…?」

(ちょっと一緒に考えてほしいな…それになぜこの人はこんなにせっかちなんだろう…。)

う~ん…

どうしよう…

謎の使用人「お困りの様ですね…」

百「誰ですか!?」

謎「彩りも残しつつ、紅茶の味を残すマリアージュを知りたいですか?」

百「な、何なんですか!?」

謎「眼鏡をこよなく愛しているのは貴方だけじゃないんですよ?」

百「あ、貴方は!」

続く…