さて、前回は大まかなお屋敷の姿をご紹介いたしました。
最近は非常に寒く私どもの宿舎からサロンに向かうのも、やや億劫に感じてしまうほどです。
私は非常に寒がりでございますので、この時期出かけるときは常に厚着を。マフラー、手袋の装備を忘れたことはありません。それでも広大な敷地内、歩いてサロンに行くにはどんなに早く歩いても十分以上は掛かります。風が強い日などは、歩いているうちに耳が寒さではち切れそうになります。
先日はそんな私の横を、田辺執事が手に入れたばかりのピカピカの折りたたみ自転車で悠然と走りすぎて行くものですから、何だかとっても悔しい気持ちになりました。
何はともあれ、お嬢様もこの季節あまり無理をなさってお出かけになりますと風邪を引いてしまいますので、お気をつけ下さい。
それでは本日は、お屋敷本館の裏手に広がっております、広大な森について触れてみましょう。
この森は、都会の喧騒から離れ、心身をリフレッシュさせるには最適の場所です。
ですので普段、大旦那様を始め使用人たちもよく足を運びます。
森のある部分は人が快適に歩ける道が用意されているので、我々はそこを散策したり、ジョギングをしたり、田辺執事の様に手に入れたばかりのピカピカの折りたたみ自転車でサイクリングを楽しんだりしております。
・・・しかし、我々が使用しているのはこの森のほんの一部にしか過ぎません。
実はこの森のほとんどは未開。
大旦那様もご存じない謎に満ちた場所なのです。
以前、長岡君がお酒を飲んで気分が良くなり、「私は大自然に囲まれ、星を見ながらお酒を飲みたい!」などと突然言い出し、フラフラと森へ出かけ行方不明に・・・
その数日後、半分干からびた状態で彼が行き倒れているのを大河内君が発見する、といったことがありました。
それほどこの森は広大なのです。
ですので、この森では様々な不思議と遭遇すると言った話も聞きます。
本当か嘘か、私は確認したことはございませんが、森の奥深くにある薄暗い場所に、
一体の残念そうな顔をしたお地蔵様が立っているそうです。
何をしてくるわけでもないのですが、その横を通り過ぎる瞬間、こちらをチラリと見てくるような気配を感じるんだそうな・・・
いつの時期に、誰が、何の為に立てたのかは謎です。
この森の守り主であるかも知れませんし、それ以外の何かかも知れません。
そんな不思議もあるようです。
好奇心旺盛なお嬢様のことですから、きっと興味をお持ちの事でしょうが、あんまり深くに入り込みすぎると迷子になってしまいますから、決してお一人ではお入りになりませんように。
とはいえ、森林浴は人体に非常に良い物です。
樹木から発生するフィトンチッドを浴びることで、疲労回復効果を得ることが出来ます。
余談ですが、森には独特の「音」があります。
お嬢様も森に行って、気持ちが安らいだ経験はありませんか?
実は、この森の音響を解析すると、脳にα波を出させリラックス効果をもたらす、1/fゆらぎが検出されるそうです。
お嬢様も、時には何も考えず、ゆっくりと森を歩いてみましょう。
きっと、気持ちがスッキリとする筈です。
・・・っと、その前に温かくしてお出かけ下さいます様に。