お嬢様、お坊ちゃま方いかがお過ごしでございますか?
伊織でございます。
今年も、8月19日「俳句の日」を迎えるにあたり、大旦那様よりお嬢様に一句お贈りするようにと仰せつかりました。
19日当日、お屋敷へご帰宅いただく皆様へ、お出迎えいたしました執事より僭越ながらわたくしの詠みました句を贈らせていただきとうございます。
帰り待つ 閑かの門に 鳳仙花
お嬢様のお帰りを待つ夏の午後3時。
陽射しは強くとも、少しずつ夕の匂いをはらみ始めております。
誰もいない庭先は風すら吹くことなく、木々の枝葉も微動だにせず静かなままです。
時間が止まってしまったかのような錯覚と、そんな静止した世界にひとりだけ置いてきぼりをくってしまったかのような感覚を覚え、目がくらむような気がいたします。
強く明るい夏の太陽が目に映るものをみんな同じ色に白ませてしまう中、玄関脇に咲く鳳仙花の赤だけが現実味を帯び、わたくしに自分以外も存在することを主張してくる――
そんな光景を句にしてみました。
鳳仙花のようにご自身の存在を強くもって、ご自身を見失うようなことなく、まだまだ続く暑い日々を健やかにお過ごしいただけますように。