司馬でございます。
皆さま、お健やかでいらっしゃいますか?
からりと晴れた過ごしやすい日々が続いておりますね。当家庭園の若葉も青々と育って、目を楽しませてくれております。どうぞごゆっくりと散策などお楽しみくださいませ。
さて、お屋敷には古えより名水がこんこんと湧き出ております由緒正しき、石造りの立派な井戸がございます。お嬢さま方のお口になさいます紅茶なども、当然この井戸からの名水でいれております。
さきごろ、愛読しております英国の歳時記を読んでおりましたら、
「―復活祭の40日後、5月19日の昇天節に降る雨は聖雨とされている。同様にこの日の早朝に聖なる井戸からくみ上げた水にも特効があると信じられている。井戸祭りのシーズン。昇天節や聖霊降臨の祝日のころは各地で盛んに井戸祭りが行われている」
このような記述を目にしたのでございます。
井戸祭り?
あまりなじみがございませんが、当家は万事英国風に倣うのが基本でございます。あまり大仰なお祭りなどはできなくとも、せめてそれにちなんでと思いたち、私自ら陣頭指揮をしまして数名のフットマンと大切な井戸のそうじを行いました。
当家の使用人たちは働き者ばかり。ほどよい暑さもあいまって水仕事も心地よく、皆はまるで川遊びに来た子供たちのようにはしゃぎつつ、あっという間に古井戸は念入りに磨きあげられたのでございます。
これも一種のお祭り気分でございましょうか?
そのあとで早速くみあげた一杯を口にしたところ、ひんやりとのどにしみて実に心が洗われるようでございました。なるほど、たしかに霊験がありそうです。
いずれにせよ、これで昇天節の効果が一年中続けば、まことに幸いでございます。
皆様方もどうぞ、由緒ある名水でいれました当家の紅茶で日々お健やかにお過ごしくださいませ。
では、今回はこの辺りで失礼いたします。