ならないベルを今日も待つ

台風に吹き飛ばされた雲たちが返って来てしまいましたね。
お屋敷のございます東京の空は、うっすらと雲に覆われております。
日差しを避けて風を感じていられる事に恵まれたと、とらえ方を違えてみましょう。
いかがお過ごしでしょうか、伊織でございます。

ようやく秋を意識させてくれる風が吹き始めましたね。
お嬢様方も、お勤めや学舎への行き来の道で実感されているのではないでしょうか?
夏の休暇をすぎ、忙しい毎日をお過ごしであるかとは存じますが、そんな時ほど一度立ち止まって手を休め、一息入れることが大切です。
長い長いマラソンだからこそ、いくつもの給水ポイントがある――そんなものです。

これから年が暮れて行くにしたがい、お嬢様方の手を煩わせる事情も多々ござましょう。

何事もおひとりで根を詰めすぎませんように。
時には心からお休みいただけるお屋敷がござますこと、お帰りをお待ちするわたくしども使用人がおりますことを思い出してやってくださいませ。

すぐにお茶をご用意できますように、やかんは常に火にかけております。