四月

八幡でございます。

春の訪れとともに、世の中が妙に活気づいてまいりました。道行く人々の足取りもどことなく軽く、桜の花びらが舞い散る中で「春ですねぇ」などと呟く声が聞こえてまいります。しかしながら、私は知っております。この季節が決して穏やかでばかりではないことを。

まず、春は「外に出るか、出ないか」の狭間で揺れ動く季節でございます。冬の間は「寒いから」と言い訳し、夏になれば「暑いから」と逃げ道がございますが、春の陽気はそれを許しません。「こんなに過ごしやすいのに、出かけないのですか?」とでも言わんばかりの陽気な空気が、自室の外からプレッシャーをかけてまいります。まるで、善意に満ちた押し売りのような圧力でございます。

加えて、春というのは「何かを始めねばならぬのでは」という気持ちにさせられる季節でもございます。「新しい季節です! さあ、何かを始めましょう!」という雰囲気が世間を包み込む中、私は静かに思うのでございます。「いや、私は特に変わるつもりはないのですが」と。しかし、周囲の「春だから!」という圧に負け、何かしら形ばかりの新習慣を始めたとしても、それが続いた試しがございません。「四月から毎日○○をする!」と意気込んだ人々が、一週間後には「まぁ、気が向いたときにやればいいか」となっている姿を何度見てきたことでしょう。

さらに、この季節は人間関係の波も大きゅうございます。新たな環境に身を置く方々が「自己紹介」という試練に直面し、どうにか無難に乗り切ろうと奮闘している姿が見受けられます。自己紹介というものは実に難儀なもので、「面白くせねば」と気負いすぎると滑り、「普通に」と思えば味気なくなり、最終的には「とにかく無難に」と妥協せざるを得ません。

このように、春という季節は思いのほか忙しゅうございます。ぜひともティーサロンでゆっくりとお過ごしくださいませ。