秋は夕暮れ。
「枕草子」の一説でございますね。
お嬢様、お坊ちゃま、如何お過ごしでございましょうか。
佐倉でございます。
四季の移ろい、そしてそれぞれの趣深さを表したとされる「枕草子」。
未熟な私には、まだまだ全てを理解するのは大変難しゅうございますが、しかし、秋の夕暮れの美しさというのは、感じ得るものがございます。
真っ赤な夕暮れ、揺れる黄金の芒に、空に舞う秋茜。
素晴らしい秋の景色にございます。
付近では赤々となる柿を必死に啄む鳥が……おやおや、もちろん自然の摂理でございます。
止めることは難しゅうございますが、そちらの木は収穫を控えてございますので程々に。
その様な光景を眺めながら、幼き頃の思い出がふと呼び起こされました。
収穫が終わったであろう柿の木に、ほんの少し実が残っているのを見た私は、聞いたのでございます。
「何故全てを収穫しないのか」と。
「次の年もたくさん実をつけるようにという意味だよ」
そう教えてくださったのは、どなたでございましたか。
幼い私は、全てなくなってしまうと、次がならなくなってしまうのか、と啄む鳥をみて少々見当違いの恐怖を覚えたのでございますが、後になり、古来よりの風習である事を知り、成る程と思ったものにございます。
おやおや、二つ目にございますか?
随分とお腹が空いていたご様子。
このままでは、全て食べ尽くされてしまいますね。
そのように思いながら、庭師の元へと向かいます。
あなたの分もお残し頂けますようお願いしてまいります。