クリスマスティー

ご機嫌麗しゅうございます、お嬢様。
隈川でございます。

遅ればせながら、先月は私が考案しましたオルソのキャンブリックミルクティーアイスクリームをサロンにて振る舞う機会を賜りましたこと、この場を借りてお礼申し上げます。

お嬢様の食後の癒しに少しでも貢献できたならば幸いです。

気がつくともう12月。
街全体がクリスマスムードに賑わい、ティーサロンで流れる音楽もこの時期はクリスマスソング。

寒がりな私は冬があまり得意ではありませんが、日本のクリスマス特有のパァッと明るい雰囲気は性分に合っているのか、無性に浮かれた気持ちになります。

給仕の後、自室に戻りシャワーを浴びたら、鼻歌交じりに少し濃いめの『ユールミステリエ』を淹れて、もこもこした格好でくつろぐのがこのところのマイブームでございます。

今年のクリスマスもお嬢様にとりまして、素敵な思い出になりますように。

そういえば、クリスマスティーとアガサクリスティーって響きが似ておりますね。

隈川

幸いなる歳月

司馬でございます。
皆様、お健やかにお過ごしでございますか?

十二月になりました。
いよいよ年の瀬でございます。
なにかとあわただしくなるこの頃かと存じますが、どうぞお体を気遣いつつ、新たな年をお元気にお迎えくださいませ。

私事で恐縮でございますが、この月で執事のお仕事を始めまして、ちょうど十年が過ぎました。

お嬢さま方や、使用人仲間のやさしい笑顔に囲まれて、とても楽しく、あっという間の年月でございました。
このような長い間、私のような者が執事を務まりましたのも、皆さま方のお陰でございます。
本当に司馬は果報者でございます。
ありがとうございました。

スワロウテイルという場所が、いつまでもお嬢さま方に安らぎをお届けできるよう、あらためて力を尽くす所存にございます。
まだまだ至らぬところもございますが、今後とも、十年、二十年と、どうぞよろしくお願いいたします。

では、師も走りまわるという年末でございます。
やるべきお仕事も山積みですので、この辺りで筆を置かせていただきます。

皆様方におかれましても、幸いなる歳月が訪れんことを・・・。

Brilliant

冷たい木枯らしが龍の息吹のように荒れる季節が到来しました。

ジングルベルを目覚まし替わりに起床したい能見でございます。

お嬢様、お元気でいらっしゃいますでしょうか。

師走という文字通り、ほんの少し慌ただしい毎日でございますね。

移ろいゆく街中も普段より浮足立つような雰囲気を肌で感じます。

吐息が白く、冬の寒空にまるでわたあめのように消えてゆきます。

オリオン座が見えます。あれはシリウスでしょうか、綺麗ですね。

今年を改めて振り返りますと、本当に様々な出来事がございました。

もう言葉では伝えられないほど、沢山の思い出が私の中にあります。

それは決して御伽の国のような素敵で華々しい物語ばかりではなく。

ただ申し上げるならば、後悔のない一年であったと感じております。

そんなことを考えながら、使用人寮の廊下を一人で歩いております。

時折、寮の一室から使用人達の談笑する声が聞こえて参りました。

カウントダウンパーティーの準備をしているのでしょうか。はたまた、

お鍋でも囲んでいるのでしょうか。楽しそうで何よりでございます。

自室の前まで辿り着き、蝶番の軋む音を聞きながら扉を開けました。

凛と静まり返る室内。暗い空間に、カボチャ型のランプを灯します。

皴にならぬよう燕尾服をハンガーに掛け、ベッドへ身を投じました。

ふと横に目をやるとリボンを掛けられた箱が視界に映り込みました。

「こんな箱、うちの部屋にありましたっけ?」

手のひらサイズの小さな箱。私に見覚えは全くございませんでした。

当家の紋章が描かれております。おそるおそるリボンを解きました。

そんな見知らぬ箱の中に入っておりましたのは――

それは本当に綺麗な宝石。

蒼く蒼く光放つ、サファイア。

お嬢様、私から今年最後のご報告です。

私、能見はファーストフットマンに昇格致しました。

このような命を授かりましたこと、光栄に思います。

ありがとうございました。そして、これからも。

能見