宇宙こま

何ごとも決めつけてかかるのは良いことではないと、学童の
時分に教わったことを思い出しました。
早くに教わる物事ほど肝要なこともございません。

しかし、今年の暑気のなんと頑ななことでしょう。
暑気を払えと、柳蔭のひとつもあおりたいものでございますが、
さすがにお嬢様にはお持ちするわけには参りませんか。
冷やし飴か酸梅湯でもお持ちいたしましょう。
ご機嫌いかがでございますか。
伊織でございます。

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緋毛氈 気取れど悔やむる 捨て扇

「本日は俳句の日でございます」

――人まねはいけませんね。気恥ずかしくてなりません。
本日8月19日は語呂合わせから、俳句の日と言われております。
大旦那様より、この日に際して句を詠んでみよと仰せつかり、
十句あまりを認めさせていただきました。

大変光栄なことに、ご覧いただきました中のひとつをお気に召して
いただけ、本日ご帰宅いただくお嬢様方にお贈りするようお申し付け
くださいました。
お恥ずかしゅうございますが、お楽しみいただけたなら幸いでございます。

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「お嬢様への手紙~横浜紀行・弐」

我が敬愛せしお嬢様。ご機嫌麗しゅうございますか?時任でございます。
抜けるような青空には、筆で掃いたような鮮やかな白い雲が流れ、元気な蝉の声
が、夏という季節の到来を誇示するかのように鳴り響く…。
世はまさに真夏と言うべき季節のようでございます。

最近はドアマンを仰せつかることも多い時任でございます。
扉を護らせて頂いている間は、外界から漂い込む陽光に怯え、夏の暑気を感じて
はお嬢様の身を案じております。

お嬢様方、夏の太陽の下、向日葵の花のように微笑むお嬢様方も確かに美しゅう
ございます。
ただ、お身体に障るといけません故、どうか日傘と帽子はしっかりと携えて下さ
いませ。
この夏らしき真夏の日々に相応しく、白いつば広の白帽子に、軽やかなレースの
白日傘などいかがでございましょうか?
輝く陽光の下、青空の下に映える清楚な白いお姿で、笑顔でお戻り頂けるお姿を
、私どもは眩しさに眼を細めながらお迎えすることでございましょう。

――…あちちちちち。

なんにせよ。このように如何にも夏らしい夏は数年ぶりのように存じます。
お嬢様方、くれぐれも日中は涼しくお過ごし頂き、無理をなさってお体の具合を
崩しませんよう、ご自愛下さいませ。
私どもは、お屋敷を涼しく整えながら、いつでもお帰りをお待ちしております。

さて、それでは今宵も駄文を添えさせて頂きます。
どうかお休み前のナイトキャップ代わりにでも、お楽しみ頂ければ幸いでござい
ます。

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『始まり』

各人の反応は様々でした。

ある者は歓喜し、

ある者は静かに頷き、

ある者は使命感に奮え、

ある者はまぁマイペースに・・・。

しかし、皆の瞳には揺るがないただ一つの道が映っていたこと。
それはまごうことなき真実でした。

全ての方々に喜んでいただくために・・・。
私たちは大旦那様から新たな使命をいただきました。

うまくいかないこともあるのでしょう。

多くの壁に行く手を阻まれることもあるのでしょう。

希望と不安の連鎖に一喜一憂を感じるのでしょう。

時には仲間と真剣にぶつかり合うこともあるのでしょう。

しかし、一番大切なことはそれでもなお皆が手を取り合い、
その先に待つ皆様に喜びを感じてもらうことだと思います。

今まさに新たな幕が上がろうとしています。
どうか私どもの切磋琢磨する姿を心から見守っていてくださいませ。