日誌

お屋敷に来てから、たくさんの楽しみが増えました。

紅茶を淹れる楽しみ、ご給仕をして喜んでいただけた時の喜び、
仲間のフットマン達と共に楽しく過ごす時間。

そして、
先輩や、仲間フットマンの日誌を読む楽しみがございます。

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『始まり』という事

 子供の頃、父に買ってもらった「ことわざ辞典」
その最初の1ページ目、その3つ目の項目に書かれていたことわざが

―会うは別れの始め―

でございます。

これは、人と出会えば必ずその人との別れが訪れるという意味でございます。

私は子供心に「なるほど!」という納得と同時に、人の人生の中に深く根を張った運命のような力を感じ、何だかやるせない様な寂しい気持ちになったことを覚えております。

出会ったその瞬間から別れが始まるのです。

頭では解っていても、どうにも受け入れることが出来ません。
大好きな人たちと過ごす、忙しい毎日。
この何気ない日常がずっと続くと思っていた・・・・
そう思うのは、当然の事でございましょう?

しかし

変わらない毎日などこの世には存在しません。

前に進むからこそ、変わろうとするからこそ、「人間」なのです。

 このほど、鮫島がイギリス留学へ、伊織が通称『穴ぐら』へと行くこととなりました。
もちろんこれは、ことわざで言うところの『別れ』ではありません。
会おうと思えばいつでも会いに行ける。

しかし、何気ない日常、その「一部」との別れであると考えられます。
何となく寂しいですが、彼らの新しいステージでの成功を願うばかりです。

人は長い歴史の中ではなく、その短い生涯の中で大きく進化する生き物です。

私は留学にも穴ぐらにも出稼ぎにも参りませんが、だからこそ彼らに負けない様に前に進みます。

ふと後ろを顧みた彼らが、安心してこれからの執務に集中できるように。

いつもはお嬢様方に向けて申し上げる言葉ですが、今夜ばかりは彼らに向けて使用することをお許し下さい。

新たに始まるあなた達に・・・

―行ってらっしゃい―