はなぺちゃ

新年明けましておめでとうございます。
さっそく新年の抱負が来月からの抱負に変わってしまいそうな伊織でございます。

とある使用人から、唐突に「犬派か猫派か」という質問を投げられました。
珍しくもない質問ではございますが、なにも給仕の最中に声を掛けてくることもないでしょうに……。

お嬢様はどちら派でしょうか?

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かも

梅とも桜ともつかぬ花が咲いていると思えば、これまで意識したことのない枇杷の花でございました。
毛皮の外套から顔を出している様を見ていると、立冬をすぎて寒くなる一方のこれからの季節を今一度意識させてくれます。
お変わりございませんか。
伊織でございます。

今月はお屋敷でご用意しているディナーのメインディッシュに鴨肉のローストがございます。
実は鴨肉はわたくしの大の好物でございまして、メインディッシュにお悩みのお嬢様には、すべからくお勧めさせていただいております。
寒い季節、わたくしの実家においては、よく鴨鍋をしたものです。
何を思ったか一羽まるまる用意する習慣が絶えず、鍋一度では終わらずに、3日4日続いて焼いたり煮たりゆでたりと、さまざまな頂き方で鴨を食べ続けたものです。
そして年が明ければお雑煮にも鴨。
まさに望むところでございます。

たまには家族の顔を見に帰るのもよろしいですね。
鍋を囲んでの団らんが恋しい時期でございます。

かくれんぼ

窓を開け放つと、まばたきするより速くわたくしの鼻孔に漂い入るものがございました。
朝のけがれない外気を彩るその香りは、またたく間にわたくしを幸福で満たし、秋であることを知らせてくれました。
目に見えない幸福という価値観は、同じく目に見えることのない香気によってもたらされることもございます。

さぁ、今年もあなたとのかくれんぼが始まります。わたくしが見つけるのが先か、それとも、あなたがどこかへ去っていくのが先か、ひとつ競争とまいりましょうか。
ねぇ、金木犀。

街中を満たす金木犀の香気のように、お屋敷にお帰りになるお嬢様方が、ささやかでも幸福に満たされますように。
伊織でございます。

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迷いねこ

ようやく秋の気配を感じられるようになってまいりました。
蝉の声はすでに遠く弱く、落ち蝉の乾いた腹が聞かせる幻であるかのようです。
秋の虫へ継がれた楽譜は同じ愛を歌っているにもかかわらず、蝉のそれとは対照的に、月と闇とに抱かれてもの悲しさを湛えているように聞こえてまいります。
わたくし個人といたしましては、彼ら秋の虫の声色の方が筆のさまたげにならない分、その思いを応援してあげたい気持ちになるものです。

いかがお過ごしでございますか。
伊織でございます。

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君さらう 色なき風と 終列車

目を傷めるような陽の強さに閉口する毎日でございますが、そんな陽にどことなく赤味が見て取れるようになると、いくらかは涼しい季節へと近づいているのだろうかと
期待せざるをえません。
いかにして暑を避け涼をとるかは、まだまだ当面の課題であるようです。

先日ちらとお話ししたローズヒップのコーディアルもよろしいですが、この季節にお召し上がりいただくならエルダーフラワーの物もおすすめです。あっさりめの紅茶で割っていただくと、また格別でございます。
いかがお過ごしでしょうか、伊織で御座います。

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