残暑

司馬でございます。

あっという間に、夏の盛りをすぎてしまいました。

今年の暑さは、例年よりも短く、そして強烈に感じられましたが、お嬢様方、体調をお崩しではございませんか?

いきなりの猛暑には本当に困りましたが、夏好きの司馬と致しましては、実は過ぎ行く季節を惜しむ気持ちも少なからずございます。
とりあえず、まだまだ続く夏の残り香を存分に楽しみたいと思っております。

さて、夕暮れの気配は、たしかに早まりつつある様でございますね。
そろそろ、仕事終わりに傾ける盃をこっそり用意しておきましょう。
今宵の肴は、茄子の浅漬けに山葵を添えて・・・。
なにか、良い辛口の日本酒を香川に教えてもらいましょうか。

おっと、その前に。

夜分は少しばかり冷えてまいりましたね。

いつでもお嬢様方がお使いいただけるように、厚めの寝具を整えておくように致しましょう。

どうぞ、涼しい夜風を感じながら、今宵も良い夢をご覧くださいませ。

お暑うございますね。

司馬でございます。
皆様、お健やかでいらっしゃいますか?

ずいぶんと長かった梅雨もようやく明けて、夏の日差しがじりじりと照りつけて参りました。
今年の夏も、暑くなりそうです。

お嬢様方におかれましては、どうしてもご公用でお出かけになることもあるかと存じます。
残念ながら、まだまだマスクの着用も必須となっておりますが、本当に熱中症が心配でございます。

どうぞ、ご無理をなさらず、水分・塩分の補給と、たびたびの休息は必ずお取りくださいませ。

もちろん、お嬢様方のご休息の場として、スワロウテイルはいつでもご帰宅をお待ちしております。
いつもどおり、涼しげなデザート、そしてお飲み物の準備も万端でございます。

しかしながら、お体の冷やしすぎというのも、また禁物。
お屋敷は快適な室温に整えておりますが、時には行き過ぎてしまうこともございます。
時々は、温かなお飲み物をお召し上がりになりまして、また、ショールやおひざ掛けのご用意もございますので、いつでもお申しつけくださいませ。

では、くれぐれも大切なお体をご自愛なさって、素敵な笑顔をお忘れなきよう。

今回は、この辺りで失礼致します。

[燕シネマ]~7月のラインナップ~

司馬でございます。皆様、お健やかでいらっしゃいますか?

外出自粛もわずかに緩和され、司馬の大好きな場所である映画館も再開を始めました。ただ、上映予定の大幅変更のためでしょうか。作品の不足により、往年の名作がスクリーンにかかるという興味深い状況が発生しております。まるで、かつての「名画座」のように。

お嬢様方、ご存知でしょうか?かつて、「名画座」というものが全盛を迎えていた時代がありました。最新作としての上映を終えた映画を、二本立て、三本立てで上映する館のことでございます。安価な入場料金で、たいていはこぢんまりとした劇場でございました。しかしながら、レンタルビデオや動画配信のない時代において、そこは映画ファンの心のよりどころであり、学びの場でもございました。そして、時折組まれる特集上映のラインナップは、館主の趣味や鑑賞の経験がうかがえ、それもまた楽しいものでありました。

そこで、司馬はこんな夢想をいたします。当家のシアター施設で名画座[燕シネマ]を開き、支配人としてプログラムを選ぶ栄誉を任されたら、と。以下は、その夢想を広げたお遊びでございます。
お暇ならば、おつきあいくださいませ。

名画座[燕シネマ]週替わりで、三本立ての特集上映を開催するという趣向でございます。

第一週・特集:人間賛歌~人生とは良いものだ、と思わせてくれます~

「ショーシャンクの空に」
監督:フランク・ダラボン出演:ティム・ロビンス、モーガン・フリーマン

「ドリーム」監督:セオドア・メルフィ出演:‎タラジ・P・ヘンソン、‎オクタヴィア・スペンサー、 ジャネール・モネイ

「グリーンブック」監督:ピーター・ファレリー出演:ヴィゴ・モーテンセン、マハーシャラ・アリ

第二週・特集:謎が導く~果たして、ラストで明かされる真相とは?~

「羅生門」監督:黒澤明出演:‎三船敏郎‎、森雅之‎、‎京マチ子

「ユージュアル・サスペクツ」監督:ブライアン・シンガー出演:ガブリエル・バーン、ケヴィン・スペイシー

「ファイト・クラブ」監督:デヴィッド・フィンチャー出演:ブラッド・ピット、エドワード・ノートン

第三週・特集:古き良きミステリー~名探偵の活躍~

「オリエント急行殺人事件」(1974)監督:シドニー・ルメット出演:アルバート・フィニー、マーティン・バルサム、リチャード・ウィドマーク

「シャーロック・ホームズの素敵な挑戦」監督:ハーバート・ロス出演:ニコール・ウィリアムソン、アラン・アーキン、ロバート・デュヴァル

「犬神家の一族」監督:市川崑出演:石坂浩二、加藤武、高峰三枝子

第四週・特集:ホラーの転回~夏の夜を涼やかに。ホラー映画史において記念碑的な三作~

「遊星からの物体Ⅹ」監督:ジョン・カーペンター出演:カート・ラッセル、キース・デヴィッド、A・ウィルフォード・ブリムリー

「羊たちの沈黙」監督:ジョナサン・デミ出演:ジョディ・フォスター、アンソニー・ホプキンス

「キューブ」監督:ヴィンチェンゾ・ナタリ出演:モーリス・ディーン・ウィント、ニコール・デ・ボア、アンドリュー・ミラー

さて、いかがでございましたか?これらの作品について、個々に司馬なりの解説も試みたいのですが、いささか饒舌も過ぎました。ご興味をお持ちになられたタイトルがございましたら、ぜひともご鑑賞くださいませ。ご鑑賞後、いささかなりとも心の琴線に触れたのであれば、[燕シネマ]支配人として、これ以上の幸いはございません。そして、もしも、この夢想と駄話がお嬢様方のお気に召されたのなら、また同じような趣向を試みようと存じます。

・・・今宵も、良い映画を。

また新たに

司馬でございます。皆様、お変わりございませんか?

なんと、二か月にもおよんだティーサロンのお休みも、ようやくおしまいでございます。
執事の任を仰せつかってから、このように長い間、お顔を拝見していないのは初めてのことでございました。難を避けてのご別宅でのお暮しは、いかがでございましたか?ご無事でいらしたのなら、本当になによりとお慶び申し上げます。

さて、お嬢様方。茶人・千利休が後世に伝えた「利休百首」というものをご存知でしょうか?茶道の心得を簡潔、かつ具体的に百の道歌に仕立てたものでございます。
司馬がこれを知ったのは、ずいぶん前の話、少しばかり茶道を習っていた時のことでございます。

その一首目は、“―その道に入らんと思ふ心こそ 我身ながらの師匠なりけれ”
でございます。
人は、なんらかの技を身に着けようとするとき、その人なりの理想の姿を抱くもの。その技とは、習い事であったり、趣味であったり、あるいは職業であるかもしれません。そして、初心の理想に近づくため、修練を重ねていくものでございます。もし、学びの過程において、ためらいやあきらめが生まれたなら、その道を始めようとしたときに抱いた理想こそ、邪念を払ってくれる指標となるのではないか。
と、これは私なりの勝手な解釈でございます。

わが身を振りかえりますと、大旦那様から執事を仰せつかった時に夢見た姿に近づけているか?見識、立ち居振る舞い、心構えなど、まだまだと赤面する思いでございます。

長いお休みが空けて、ついにスワロウテイルも再出発でございます。自身が抱いた理想のため、ともに働く同僚のため、そして、なによりも、つねに使用人たちを思って下さるお嬢様方のため。司馬も、新たなる心でお仕えいたしたいと決意いたしております。どうぞ、これからもよろしくお願いいたします。

では、ティーサロンでの再会を楽しみにしております。

初夏ですね。

司馬でございます。皆様、お変わりございませんか?

もはや初夏。素晴らしい五月の陽気で、そよぐ風にも新緑の香りを感じます。
出不精を自任する私でございますが、この時季は思わずどこかへ出かけたくなるものです。お嬢様方はいかがでございますか?

とはいうものの、先月は満足にお仕えしておりませんので、今月こそ、お嬢様方のお役に立てればと心の底から願っております。お嬢様方に使用人たちの元気な顔をお見せできれば、本当にうれしいのですが。

この日誌を認めている時点で、ごくごくわずかながら収束の気配が見受けられますが、果たして今月のお屋敷はどうなることでございましょう。

このように大変な時であろうとも、使用人たちはお嬢様方を退屈させまいと、様々な文章を綴ってまいりました。皆、ユーモアたっぷりの巧みな筆で、使用人の立場でありながらも、私もこっそり楽しんでおりました。

身分をわきまえぬお願いと重々承知でございますが、スワロウテイルでの再会の暁には、あらためて彼らに労いの言葉などかけてやってくださいませ。

では、お嬢様方。初夏といえども、時に夜分に肌寒さも感じることもございます。ひときわご自愛なさいまして、どうぞ元気にお過ごしくださいませ。

日常

司馬でございます。

朝、使用人の中でもかなり早めに起床するほうだ。目覚まし時計はセットしているが、すでに習慣となってしまっているので、アラームが鳴るより早く目が覚めてしまう。すぐに身支度をし、多忙な一日に備えてしっかりと朝食をとる。
その後、大旦那様に朝のご挨拶をし、本日の予定を再確認。大きな行事がなければ、ティーサロンに赴いて、お嬢様、お坊ちゃま方が憩いの時間をお楽しみいただけるよう、さまざまな準備をする。
やがて、お嬢様方がスワロウテイルに訪れる。滞在時間に気を配り、お出迎え、お見送りを進めながら、フットマン達がのびのびとお給仕をできているか、万が一にも不手際がないか、なるべく細かいところまで目を向ける。
少しの休息時間。軽食をとりながら、使用人仲間と他愛もない話。諸先輩はもちろん、後輩や年少の者からも、ためになる話題をもらうことが多い。みな、冗談が巧みだ。
夜になって、一日の務めが終わる。大旦那様から、お許しをいただいてから、つかの間の自由時間。夜の食事は軽めにし、翌日が休みならば、少しの酒杯をかたむけつつ、映画や音楽を鑑賞。なるべく、日の変わらないうちに就寝する。
休日。劇場での映画鑑賞や、気の合う使用人と食事などを楽しみ、リラックスして過ごす。これで、お屋敷の仕事にも張りができる。

さて、ほんの断片でございますが、司馬の日常をご紹介いたしました。思い起こせば、日常が繰り返されるということは、なんという幸福でしょうか。退屈で、飽きがくるような日常。それはとても贅沢なことだったのだと、昨今、つくづく実感いたしております。
しかしながら、お嬢様方。
心の底から笑顔がこぼれるような春の訪れは、必ずやってくると、司馬は信じております。そして、お屋敷の使用人たち全員が、その日常を守るために尽力したいと心の底から願っております。
英知をもってお嬢様方をお守りする備え。そして、世の中を覆う黒い雲など、ものともしない覚悟が、スワロウテイルの愉快な使用人たちにはございます。どうぞご安心して、退屈でささやかながらも、穏やかで贅沢な日常を送ってくださいませ。

桃の花の下で

司馬でございます。
皆様、お健やかにお過ごしでございますか。

ようやく暖かな陽射しが降りそそぐようになり、春の気配が濃厚となって参りました。
三月といえば、雛祭り。
“桃の節句”と申しますように、この季節に咲き誇るのは桃の花でございますね。
庭園の木々も、春の訪れを祝福するかのように、梅、桃、桜と順々に、華やかな装いが繰り広げられております。
そろそろ、厚手のお召し物もお役御免でしょう。

さて、古来より桃の花には邪気を払う力があると伝えられております。
西遊記において孫悟空が盗み食いをしましたのは、西王母が開く宴に供される仙桃でございましたし、三国志演義で劉備、関羽、張飛が義兄弟の契りを結んだのも、満開の桃花の下でございました。日本では、鬼退治で有名な桃太郎が代表といったところでございますね。

せっかく咲き誇った当家自慢の庭園でございます。お部屋のバルコニーからご覧いただくのもよろしゅうございますが、今宵はたくさんの灯りをご用意し、大勢の賓客を招いて、ガーデン・パーティーなど催しましょうか。

・・・はっ?もう、ひな祭りは終わってしまった?季節外れの宴なんて恥ずかしいと?

いいえ。そのようなことは心配ご無用。三月後半は、当サロンのアニバーサリーをお祝いいただく大切な時季でございます。ゲストの皆様方がおかしく思われるはずもございません。なによりも、お嬢様方のお顔に笑顔が浮かべば、花々もとても喜びます。どうぞ、縁起の良い桃花の下、心おきなく一夜の宴をお楽しみくださいませ。

早速、使用人たち総出で、テーブルセッティングに取りかかるといたしましょう。

では、今回はこの辺りで失礼いたします。