うき世

お嬢様、お坊ちゃま、
ご機嫌麗しゅうございます。
小瀧でございます。

9月に入り過ごしやすい気温になって参りましたね。

9月といえば「中秋の名月」でございます。
私、月を見る度に思い出す和歌がございます。
それは、

心にも あらでうき世に ながらへば

恋しかるべき 夜半の月かな

要約しますと、「心ならずも、このつらい世の中を生き長らえたなら、きっと懐かしく思い出されるのだろう、この夜更けの月が。」という意味でございます。この世への悲しみを詠んだ和歌でございます。

この和歌は第六十七代の天皇(三条天皇)だった三条院が退位を決意した際に詠まれたとされております。11歳から25年間もの間を皇太子として過ごし、ようやく天皇に即位したかと思えば眼病や火災に悩まされ、権力争いの末にわずか6年で退位を決意したと言われております。

眼病を患っていた三条院にとって、夜更けの月はどのように写ったのでしょうか。

悲しいことや辛いことがありますと、つい俯きがちになってしまうものでございます。
お嬢さま、お坊ちゃまも社会勉強の中で悲しいことや辛いこともあるかと存じます。
そんな時こそ空をご覧くださいませ。
その空がいつの日か、きっと、懐かしく思えるはずでございます。

過ごしやすい気温になって参りましたが、体調を崩されませぬようにお気をつけてお過ごしくださいませ。

電気

お嬢様、お坊ちゃま、
ご機嫌麗しゅうございます。
小瀧でございます。

まだまだ暑い日々が続いておりますが、いかがお過ごしでしょうか?

私はといいますと、町の商店で“あるもの”を購入いたしました。

その“あるもの”とは……

「電 気 ブ ラ ン」でございます

電気ブランはお酒の名称で、明治26年(1893年)頃に「神谷バー」の創設者である神谷傅兵衛さんの手によって誕生しました。

当時は電気が珍しかったため、目新しいものには「電気〇〇」と名をつけることが流行しており、このお酒はハイカラなものとして当時の人々の関心を集めたようでございます。

その電気ブランを自室の冷蔵庫で冷やしておき、執務を終えた私は自室に戻るやいなやグラスに注ぎました。アルコール度数は40%
私はこれまで20%を上回るお酒を飲んだことがございませんでしたから、薬草のように甘いアルコールの香りに私の心はときめく一方でございました。

まずは1口

ビリリ、と舌先に電流が

さらに1口2口と、舌と鼻の先にツンとくるアルコールの香り、じわりじわりと暖かくなる喉

これが文明開化の味でございましょうか?
当時の日本に思いを馳せながらいただく冷たいお酒は格別でございました。

そういえば、私共使用人が身につけているシャツもハイカラーでございましたね。100年前の日本で目新しかったものが、今となっては日常の1部になっているというのは面白くございますね。

いつかは私もお嬢さま、お坊ちゃまにハイカラな味わいをお届けしたく存じます。
そのためにはもっと様々なことを学ぶ必要がございますから、本日はこの電気ブランを味わいつくしたく存じます。
ええ、これは勉強でございます。

小瀧

天晴

お嬢様、お坊ちゃま、
ご機嫌麗しゅうございます。
小瀧でございます。

時間が経つのは早いもので、私がティーサロンでお給仕をはじめてから一ヶ月が経ちました。
時間が経つと共に、少しずつ、少しずつ肩の力が抜けてまいりました。

梅雨も明け、晴天の日々が続いております。
ふと、「天晴(あっぱれ)」という言葉の意味が気になり、辞書を開いてみました。

私が用いた辞書によりますと、「天晴(あっぱれ)」は感動詞アハレ(哀れ)を促音化したもので、「天晴」は当て字。みごとなさま。とのこと

では、「哀れ」とは何たるか?と開いてみると

はじめは「尊いさま」や「愛着」など様々な感情に対して用いていたが、次第に「悲哀」や「憐憫」を表すことが多くなった。また、感動詞「アハレ」としては、「感動」や「人情」、「風情」を表している。と

驚きました。
日々の生活の中でいつの間にか見聞き親しんでいた言葉にも、私の知らない歴史や多くの意味があったのですね。
お嬢様、お坊ちゃまもふと気になったことがございましたら、辞書を開いてみると思わぬ発見があるかもしれません。

まだまだ至らぬ点も多くございますが、
「天晴」な使用人に至れますよう日々精進して参ります。

夏も始まったばかりでございますから、くれぐれも体調を崩されぬよう、ご自愛くださいませ。

ご挨拶

お嬢様、お坊ちゃま、
ご機嫌麗しゅうございます。
私、小瀧と申します。

この度、大旦那様より命を賜り
ティーサロンにてお嬢様、お坊ちゃまに
仕えさせていただくことになりました。

まだまだ至らぬ点、未熟な点ございますが、
心からお寛ぎいただけますよう精一杯努めさせていただきます。

気温や天候の変化が激しい日々が続いておりますので体調を崩さぬようお気をつけくださいませ。
ティーサロンにてお嬢様お坊ちゃまにお会い出来る日を心からお待ちしております。