ホワイトヨーク号発進です!

お嬢様、お坊ちゃま。
奥様、旦那様。
ご機嫌麗しゅうございます。
才木でございます。

一日から、ペンギンケーキのご用意が叶いましたので、
この場を借りてご報告致します。
五日の佐々木のエクストラも含めまして、
我々の二年の集大成には、
良いものになったのではないかと。
これにて、セレッソ。
桜の散るのを、背中に受けて、
いつまでも心に刻んで参りましょう。

さて、私のケーキですが、
新しい一年の始まりには、
相応しいものにございます。

これはまさに、新しい門出、
いや、船出にございます!

切り分けられたケーキは、
まるで帆船のよう。

マンハッタンを夢見たペンギンが、
いよいよ長い旅路の、
一歩を踏み出したようです!
帆船ホワイトヨーク号、
真っ白な船体は、
気持ちよく日差しを反射し、
キラキラとしておりますね。

でも、どうやら……
その日差しで、ペンギン達は、
日焼けをしてしまったようです……。
真っ黒です……元からですかね……。

辿り着く先は、果たしてどこでしょう。
決まっていても、分からないからこそ、
楽しめるのが旅なのかもしれませんね。
それいけペンギン、ゆけゆけペンギン。
長い旅路は、まだまだ始まったばかりです。
ご期待くださいませ。

才木

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いつまでも同期三人です

お坊ちゃま、お嬢様。
奥様、旦那様。
ご機嫌麗しゅうございます。
才木でございます。

先日は、私と桐島のエクストラティーでした。
お召し上がり頂きありがとうございます。
不思議な二人、いや、不思議なペンギンとシロクマでございました。
お楽しみ頂けたなら、幸いです。

さて。
毎度申し上げることですが、
言葉が多いことがよいことではない、
私はそう考えております。

逆説的に言えば、
どれだけ言葉を綴ろうと、
人間の気持ちというものは、
表しきれないものだ、とも言えるかもしれませんね。

私たちが、お屋敷の門を叩いて、
二年が経ちました。
記念の、区切りの日は、
くしくも門出の日ともなりました。

やはり、我々に似合うのは、
笑顔、でございます。
皆様もどうか、笑顔で。
皆様の笑顔は、私達の、何よりの宝物でございます。

皆様の笑顔を
手向けの花束として、
浪川に送りたく存じます。
ただ、冗談ぶって、
お預かりした花束を、
えいと、投げつけてしまいそうな気は致しますが。
改まったことは、苦手なものですから。

私達の盃は、
割れることはありません。
ですから、私が、言えることは。

さらば、友よ。
またうまい酒でも飲もう。

だだ、それだけのことにございます。

才木

季節柄のご挨拶

ハッピーバレンタイン!
才木でございます。

ホワイトチョコと普通のチョコレートを合わせると
ペンギンだなぁ、などと思っております。

日本のバレンタイン文化みたいなものには、
色々な思惑を感じたりも致しますので、
不気味なところもございますが。
彩られるチョコたちには、罪はありませんね。
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偉いよペンギン

お嬢様、お坊ちゃま。
奥様、旦那様。
ご機嫌麗しゅうございます。
才木でございます。

マンハッタンアイス。
ペンギンクッキー。
色々とご用意が叶いまして、
更にはお召し上がりも頂き、
ご感想を頂く度に、ニマニマとしてしまうものでした。

ついぞと申しますか。
私が考案致しました紅茶を、
お出しできることになりました。
紅茶を名づけるならば、これを。
そう思い暖めていた名前。
それが「ニルス・オーラヴ」でございます。
私なりのペンギンティー。
色々ございますが、
端的に申しますと、ある有名な。
いや、高名なペンギンの名前にございます。

―――

時は、1961年。
スコットランド首都、エシンバラ。
式典の折、ノルウェー陸軍近衛部隊は、
動物園を訪れました。
そこで彼らは、
1匹のオウサマペンギン(キングペンギン)に出会いました……!

まさしくまさしく。
きっと彼らの想いと、私の想い。
通じるものがあると存じます。
それは、
「「かわいい」」
でございます。

結果的に、1972年。
めでたく彼は、マスコットになり。
当時のニルス中将と国王オーラヴ5世にちなみ、
ニルス・オーラヴの名が与えられました。

現在では、階級は准将。
騎士の位を授与されております。
英語で表記しますと、
【Brigadier Sir Nils Olav】。

世界一偉いペンギン。
それが、ニルス・オーラヴ卿です。

―――

やはり、私の作る物ですから。
私の一番好きな物を、冠して。
卿の名前を冠することは、
畏れ多いところではございますが、
それに値するよう、丹精込めてお作りしました。

ただ、皆様の口にされるものですから、
高貴さという点でも、相応しいものかと存じます。

味わいと致しまして、
ヌワラエリアをベースに、
ジンの香り付けに使われます、ジュニパーベリー、
エルダーフラワーで、シャープな印象を。

更に、ミルクシスルを加えることで、
ミルクを加えずとも
柔らかい後味を感じて頂けるように。

全体的としては、
香りの良い日本茶のような、
和紅茶のような印象もございます。

そのままでお飲み頂くのも、
美味しゅうございますが、
少し砂糖を加えて頂くと、
ガラッと表情が変わりますので、
お試し頂ければ、嬉しいです。

長々と申しましたが、
実は、まだまだございます。
ですが、語り過ぎも毒というもの。

続きは、またティーサロンにて、お伝え出来れば、
それに優ることはございません。

何よりも願いますのは、
この紅茶が、皆様の安らぎと優雅なひとときの、
一助になること。

もしご賞味頂けましたら、
申し上げたいことがございます。

「MGK」

P.S.
パリもいいところですね。

才木

池田屋事変

お嬢様、お坊ちゃま。
奥様、旦那様。
ご機嫌麗しゅうございます。
才木でございます。

秋は何処、
あっという間に立冬を迎え、
いよいよ今年も終わりでございますね。
暑さが長く続きましたから、
寒さもより厳しく感じそうです。
こういった時こそ、暖かい飲み物が、美味しくなるなぁなどと、
自室で物思いに耽っておりましたら、佐々木が近寄って参りました。

「才木くん、丁度いいものがありますよ」
「三郎、顔がにやけてますけど、どうしたんですか」
「確かに冬は寂しくなりますね……やかましいわ! まぁ、飲んでみてください」

そう言った佐々木は、
真っ白なベッキオホワイトに
注がれた、紅茶を差し出して参りました。

「この芳醇な香り……ブルーベリー……」
「更に、アップルビーツカットや、ブラックベリーリーフも入ってございます」
「私はお嬢様ではないですよ……どれ」

うまい。
小さく呟いた私に、
佐々木は満足そうな顔をしておりました。

「ミルクを入れるのも、オススメでございます」
「私はストレートの方が、好きですけどねぇ」

ともかくとして、
甘い落ち着きのあるブルーベリーの香りと暖かい紅茶は、
確かに私の求めていたものです。

「待て待て待てーい!」

突然、討ち入りかと思われるような、大きな声が部屋に響きました。

「お前は」

二人の声が揃います。

「「二郎!!!」」
「浪川です」

浪川でした。

「どうしたんですか、急に」
「浪川くんも飲みますか? 佐々木の紅茶」
「いえいえ、某、それにうってつけの茶菓子を、持って参ったのです」

浪川は少し引きづっております。前世の記憶でしょうか。

「これは……紫……ですね……」
「私のケーキと似たような色じゃないですか?」

佐々木のブルーベリーレアチーズケーキ、美味しく召しあがって頂きありがとうございます。

「全然違います! これは! 紫いも!」
「「タルト!!!」」

またもや声が揃ってしまいます。
タルトなことだけは、私達二人にも分かっておりました。

「その紅茶……PSGと、この紫いものタルト、絶対あいます!」
「紫いもとブルーベリーあうんですかね、いや、でもそもそもマリアージュというのは、合わなそうなものを合わせてみるという楽しみもあって云々」

浪川と佐々木の声と気持ちが揃います。

「話が長い」
「うるせえ」

私達は、試してみましたが、
やはり皆様には、ティーサロンで
お試し頂くのが一番かと存じます。

とっても美味しゅうございました。
とだけお伝えしておきます。

ようやく浪川のケーキが、
お出しできることになり、
同期三人の味が揃います。
お給仕しだした頃には、
考えもしませんでしたが、
やはり嬉しいものです。

そう、今は、ペンギンクッキーも
ございますからね!
丁度いいお口直しになりますね。

私の紅茶もそろそろ。
それはまた次の日誌で、
お話致します。

皆様、どうかご体調にはくれぐれもお気をつけて。
私達それぞれの味をお楽しみ頂ければ、幸いでございます。

ティーサロンにて、
お早いご帰宅をお待ちしております。

才木

だからわたしに、影はございません

お嬢様、おぼっちゃま。
奥様、旦那様。

ご機嫌麗しゅうございます。
才木でございます。

さて、10月。
10月といえば、皆様何を思い浮かべますか?
近頃は、ハロウィンもあり、
お屋敷でもパーティーがありましたり、
内外問わず色々ございますけども。

私としては、あまり馴染みがなく。
なのでそういったお祝いを、
皆様とともにさせて頂けるのも、
中々楽しゅうございます。

元来ですと、特徴のない月。
変わり目の時期で、移ろい変化していく、
自然に思いを馳せる時期ですね。
日本的には、神無月でございますから、
何か他の月にはない、
ひっそりとした雰囲気が漂うものです。

賑やかな時間を楽しんで頂く、
これも一つ大事なこと。
しかし逆に、
穏やかなお時間をしっかりと
過ごして頂く。
これも大事なことでございます。

そんな時間の為に、
我々使用人はお傍に仕えておりますから。
なんなりと、ご用命ください。

私としては、
書庫の少し古臭いような、
蔵書たちが放つ香り、
それこそ八百万の神がおられそうな、
静謐な空気。
その中に居る時が1番、好きでございます。

もし活字を追うような
ご気分でない時は。
アポロンでもいれながら、
ジャック・オーランタンのお伽噺でも、
お読み致しましょう。

私、ホラーも嗜みます故。
思えば、神がいないということは、
魑魅魍魎が跋扈する季節。
ということでもありますね。

皆様の見えない、後ろの世界。
ご想像して頂くのも、楽しいもの。
大丈夫、後ろにお控えしているのは、
我々使用人でございます。
我々は、皆様の影に、ございますから。

才木