ご遅刻に関しまして

日頃より執事喫茶Swallowtailをご愛顧頂き、誠にありがとうございます。

恐縮ですが、私から皆様に進言しなくてはならないことがございます。

それは「ご来館される際のご遅刻に関して」でございます。

殆どのお嬢様、お坊っちゃまがお時間をお守り頂いているため、

このようなことを申し上げるのは少々憚られますが、近日、

ご遅刻されるお嬢様、お坊っちゃまが増えてきたように感じます。

お約束のお時間よりもご来館が遅くなってしまった場合、

紅茶やお食事を楽しむ時間を充分に設けることが出来なくなります。

お仕えする使用人もお楽しみいただけるよう人事は尽くしますが、

ゆっくりお寛ぎ頂けず、少々慌ただしく感じられるかも知れません。

馬車の遅れなど、致し方ない部分もございますが、

なるべく定刻通りのお帰りをお待ちしております。

ティーサロンで皆様が快適に過ごすことができますよう、

ご協力頂ければ幸甚に存じます。

セカンドスチュワード 能見

Twilight

夏もいよいよ本格化。これからは暑い日が続いて参ります。

日差しを感じる度にしゅわしゅわが恋しい能見でございます。

お嬢様、お元気でいらっしゃいますでしょうか。

セカンド・スチュワードとしての執務も一段落致しまして、

ようやく少しの間ですが落ち着いた毎日を過ごしております。

しかし気が付けばあっという間に夏休みに突入致しますので、

ゆっくりとした凪のようなこの時間が心地ようございます。

先日は大変綺麗なビーチで皆とお写真をお撮り致しましたり、

バンジージャンプの替わりとなる絶叫体験を致しましたり等、

少し早くではありますが、夏の体験を先取りして参りました。

遂に夏本番でございます!今年も楽しみでございますね!

お嬢様も夏休みのバカンス先はもうお決まりでございますか?

私はまだ海外渡航が少ないため、行きたい場所が沢山あります。

思い浮かぶだけでも、ヴェネツィアやアリカンテ、コルシカ島。

そして何と申しても「モルディブ」でございましょうか。

モルディブはインド洋に浮かぶ小さな島国でございまして、

地球温暖化の海面上昇で海へ沈んでしまうと言われております。

海上のコテージでずーっと、海を眺めるのが夢でございました。

どうやら私は、海が見える街に惹かれるようでございます。

この夏ご旅行予定のお嬢様。お土産話を楽しみにしております。

充実した社会勉強のため、「夏休みとは……?」と仰るお嬢様。

合間を縫ってお屋敷で夏休みを満喫して頂くのは如何でしょうか。

使用人が冷たいアイスティーをお作りしてお待ちしております。

夏の過ごし方は十人十色。

思い出いっぱいの素敵な夏でありますように。

能見

Will

暦の上では本日より水無月。雨天が続く毎日が予想されます。

合羽より先に傘を新調すべきだったと反省中の能見でございます。

お嬢様、お元気でいらっしゃいますでしょうか。

早速のご報告となってしまい、大変恐縮で忍びのうございますが、

私、能見は6月1日を以て、セカンドスチュワードに着任致します。

先日大旦那様より、紅色に輝くルビーを頂戴いたしました。

連月のようなご報告となり、驚かせてしまったかも知れません。

あっという間ではありましたが、翡翠の石とはお別れでございます。

まだまだ輝き放つ宝石でありますので、グルームオブチェインバーを

次に目指す使用人の為に、執務机の中で保管しておこうと存じます。

早くその日が来ることを願って。エメラルドと共に待っております。

これからは左胸の紅玉「ルビー」と共に歩むことになりました。

ピジョン・ブラッド色のルージュのような輝きを拝見いたしますと、

在りし日のCoteaux-Champenoisのグラスを思い出します。

屋敷の誇りを、そして伝統を胸に、改めて背筋が伸びる思いです。

昨夜は沢山の書籍と格闘しており、随分遅くに自室に戻りました。

湿度のある風を感じます。もうすぐ、私が大好きな夏が到来します。

今年の夏は、一体どんな思い出を一緒にお作り出来ますでしょうか。

新時代になって初めての夏休み。とても楽しみでございますね。

お嬢様、お坊ちゃまと、そして個性溢れる使用人たちで紡ぐ物語。

これからもよろしくお願い致します。

お早いお帰りをお待ちしております。

能見

Summons Card

ゴールデンウィークもお仕舞い。楽しい思い出は沢山出来ましたか?

緑道の木漏れ日の下で、ゆっくりグラスを傾けたい能見でございます。

お嬢様、お元気でいらっしゃいますでしょうか。

新年度も一ヶ月が過ぎ、そして気が付けば、新時代を迎えました。

大変お恥ずかしながら、新しい年号という実感もなかなかに少なく、

令和生まれのお嬢様やお坊ちゃまとお会いする機会がありましたら、

もやっとした気持ちにも、少しは変化が生じるのかも知れませんね。

ワインカーヴへと足を踏み入れる機会が以前に比べて多くなりました。

毎日毎晩のように夜遅くまで聴こえておりました、ペンを走らせる音。

暫くはインクの香りと共にずっと耳に残っていることでございましょう。

私にとっての学びの場所。これからは学びを伝えていく場所になります。

今夜は非常に珍しく、長野「塩尻」の赤ワインを手に取ってみました。

「令和」を感じたいという気持ちが、恐らく心中であったのでしょう。

日本ワインらしい、優しく包み込んでくれるようなひとときでありました。

こういった考えるための時間を過ごすのもたまには悪くのうございますね。

窓を開け放ちますと、涼しい夜風が入って参りまして心地良うございます。

季節の移り変わりに情緒を感じるのは、思い出がそうさせるのでしょうか。

幾度も幾度も。私は沢山の季節をこのお屋敷で迎えたいものでございます。

麗らかな春も。大好きな夏も。情緒的な秋も。そして寒くて大嫌いな冬も。

不意に突風が吹き、デスクに置いておりました書類たちも宙を舞いました。

木目の床へと散乱致しましたその中に。馴染みのある一通の封書が。

――なるほど。左様でございますか、大旦那様――

お嬢様。空が瑠璃色になる前には戻ります。お早めにお休み下さいませ。

能見

Twinkle

時折強く吹く春風が、新しい時候の訪れを感じさせてくれます。

葉桜へと変わるこの季節を名残惜しく感じる能見でございます。

お嬢様、お元気でいらっしゃいますでしょうか。

平成の時代に長年重ねて参りました伝統も、来月で一区切り。

新たな令和という時代へと、一歩を踏み出すことになります。

新しい環境をお迎えのお嬢様。どうか決してご無理はなさらず。

より一層のご活躍と幸福な毎日であらんことをお祈り致します。

変わらないと思っている、あるいはそう思っていた日常が、

一瞬視界からブラックアウトして、また普遍的な毎日が始まる。

新しい時代の始まりとは、私の中ではそうなのかも知れません。

ただ心の奥底に残留するのは、僅かな違和感とノスタルジー。

さて、最近は考え事が深くなってしまいまして困りますね。

誰もいないティーサロンを後に、自室へ戻ることに致します。

庭園に咲いた桜も随分と散りゆき、初夏の訪れを感じます。

使用人寮の明かりも灯っているのは二室だけでございました。

自室の扉を開けると、古びた書物とインクの香りが広がります。

机には赤い燕尾服での写真と、Coteaux-champenoisのコルク。

積み上げられた紅茶やサービスの資料。そして、その上に。

当家の紋章が描かれた小さな箱。一年前の冬に感じた違和感が。

リボンを手解き、中を覗き込みますと。

深く輝く翡翠色の宝石がございました。

お嬢様。私から平成最後のご報告でございます。

明日から「グルームオブチェインバー」に着任致します。

一日でも早く、エメラルドの似合う使用人になれますように。

これからもよろしくお願い致します。

能見

Frame or Flame

生命の息吹を感じながら、そんな麗らかな毎日が続いてゆく春。

満開の桜並木を愛車のアリア号で駆け抜けたい能見でございます。

お嬢様、お元気でいらっしゃいますでしょうか。

3月に入りまして、1年の約 1/4 が過ぎ去ろうとしておりますが、

今年の目標の達成度は、おおよそ「ぼちぼち」くらいでしょうか。

まだまだやりたいこと、やるべきことが沢山残ってございます。

目標がすぐに見つかる今の環境が、本当に有難く感じております。

お嬢様も年初にお立てした今年の抱負はお忘れではありませんか。

聡明なお嬢様なので心配はしておりませんが、万が一お忘れの際は

一度「頑張ろう」と思い立ったのですから、勿体のうございますよ。

これからのより素敵なレディへのご成長が私は楽しみでございます。

一日の終わりに「今日は充実した!」と思える日が一日でも多く。

しかし、充実感と多忙感は紙一重であるとも私は考えております。

その感情を分かつのは、自身の持つ心構えひとつなのかなあ、と

少しばかり達観にも似た感情を持つ機会が年々増えて参りました。

それは私が大人になったのか、諦めるという選択肢が増えたのか、

定かではありませんが、可能な限り、今日も素敵な一日だったと、

そう振り返ることができるような日常でありたいものでございます。

その隣にガーネット色の雫があると、更によろしゅうございますね。

しかし、本日は残念ながら、非常に残念ですがワインはお預け。

何故なら今宵はダンスと歌のお稽古が待っているからでございます。

……何ですってお嬢様。なるほど、自身の持つ心構えひとつ、ですか。

確かに。左様でございますね。

能見

White Map

ふと歩みを止めた瞬間に梅の薫りが漂う、そんな立春の時候。

来年度に見られる景色に、少し思いを馳せる能見でございます。

お嬢様、お元気でいらっしゃいますでしょうか。

気付かぬうちに2019年も1ヶ月が経ち、動揺が隠し切れません。

今年もあっという間に時間が経過してゆくのだなあと感じます。

あれもこれもと手を伸ばしたいと思うことも多くございますが、

昨年作った土台の上に身の丈に合った建築を行いたく存じます。

本日はとても久し振りに、ドリップコーヒーを淹れてみました。

最近はどうしてもインスタントに頼りがちでございましたので、

落ち着いたタイミングで、と先延ばしにしていた自分もおります。

「トラジャ」にしました。決して名前で選んだ訳ではありませんよ。

湯気と共に室内へと舞い上がる、懐かしいノスタルジックな香り。

考え事をしたいときには、こんな機会もよろしゅうございますね。

ワインのこと、サービスのこと、公演のこと、使用人仲間のこと。

そしてお嬢様のこと。考えなければならないことはいっぱいです。

考え事が多いというのは、ある意味幸せなことなのかも知れません。

あれやこれやと発想を重ねるのは性格柄楽しゅうございますからね。

私は自室のデスクに高く積まれたワインの書籍に手を伸ばしました。

そろそろ、例のワインたちの選定に入らなくてはなりません。

3月のアニバーサリー期間では特別なワインをご用意致します。

昨年と同様、ワンランク上のワインを只今調査中でございます。

ワインリストの確定次第、なるべく早くにご連絡を致しますね。

マダムバタフライとのマリアージュ、どうぞお楽しみ下さいませ。

まだお寒い気候が続いて参りますので、ご油断されませんように。

私はもう少しだけこの書籍との闘いを続けようかと思いますので、

お嬢様はどうぞお先にお休み下さいませ。

能見