古谷でございます

海の世界で生きる舞姫。

異なりし場所で生きる、地上の彼に心惹かれた彼女はすべてを賭してまで、水のなき晴れた海へと昇ります。

たとえその声奪われようとも、その身を焦がすほどに溢れ出る、彼に抱いた切なく儚いその想い。それでも想いは届かなかった。泡のようにやがて消えゆく、それはあまりに切なく悲しい物語。

儚く立ち上る泡のような気持ち。決して叶わない願い…。

「スプモーニ」と申しますカクテルをご存知でございますか?イタリア語でspumare(泡立てる)という意味の言葉から生まれたこのカクテル。甘みの中に、ほろ苦い余韻が後をひく、泡立つこのグラスを眺めていると、掴めない気持ちすら飲み込んでしまいたい。そんな今にも弾けてしまいそうな、儚き想いが込み上げてくるかもしれません。

「人魚の涙」

アクアマリンのもうひとつの名前。

もしもこの世に涙の色に染められた、そんなスプモーニがあるとしたら、その色はアクアマリンの輝きの如く、きっと儚い色をしているに違いありません。そしてそのお味はあまりにも爽やかで、甘くほろ苦い。海の舞姫、人魚の想いを表すような、そんなお味でないかと存じます。

スワロウテイル開館記念日。当日までまもなくでございます。

何かのおわりが何かのはじまりのために在るのだとしたなら、たとえこのカクテルが儚く消える泡のように、切ないお味をしていたとしても、貴女を前へと進めるような、そんな新たなる門出のグラスになれば幸いでございます。

よろしければお召し上がり下さいませ。11周年記念カクテルとして、当日ご用意致します3月のバースデーカクテル。その名前は、

「Tear–moni」ティアモーニ。

古谷

古谷でございます

グラスはシャンデリアから零れる光を跳ね返さんとばかりに、ひとつずつ丁寧に磨きあげられてございます。

酸味と甘み。ふたつのバランスが均整に整えられたその様は、まるで身に纏うドレスの様にとびきり贅沢で。

そして表情は貴女のご気分に合わせて何色にも変えられる事が出来ます。

楽しい時はより華やかに。

寂しい時はそっと寄り添うように。

鮮やかに仕上げた虹彩を、その瞳の奥に映して頂いて、

ほんのすこし酩酊の世界に誘うこの甘美なアロマを吸い込んで頂き、

乾いた喉を潤して、

最後は空になったグラスに残る余韻を受け取って下さりましたら、

お席を立ち上がるその瞬間、すこしだけでも元気になって頂けたら、これ以上の喜びはございません。

3月バースデーカクテル。

ご提供日は来る24日。

大旦那様よりご用命を受け賜わりました。

この日、ティーサロン スワロウテイルは11周年を迎えます。

記念すべきこの偉大な日に、果たして見合うのかはわかりかねますが、新しい一年を祝う、新たな幕開けに添える事が叶いますような、そんな特別なグラスを必ずご用意させて頂きたいと存じます。

私は思うのです。

カクテルが魅せてくれる、妖艶であり美しいこの景色。

お酒が好きでも仮にもしそうでなくとも。

如何なる時であっても冒頭で述べたようなこの素晴らしき世界が、当家のお嬢様にきっとお魅せできると信じております。

本日は上手に伝えられたかはわかりませんが、是非とも当日その目で確かめて頂きたいと存じます。

一年前、時任執事から襲名した当家バースデーカクテル。お作りします12番目のグラス。ひとまず最後の締めくくりの舞台は、格式高いこの記念日にて、僭越ながらお帰りをお待ちしております。

ただの一杯のグラスにどうか、グラス以上の「おもい」をのせることが出来ますように。

古谷

古谷でございます

新しい一年が始まりました。

4年前に授かった背中の翼。

昨年よりも、あるいは昨日よりも、貴女がまだ見ぬ高い処へと運んで差し上げられますよう、年を重ねるごとに力強く前へ前へと進んで参りましょう。

来月は水瀬がチョコミントの甘いカクテルをバレンタインの贈り物としてご用意致します。

その前日には私のカクテルデーがございますが、アメジストの石言葉になぞられえて、僭越ながら私からもバレンタインの贈り物として、お作りしたいと存じます。

改めまして、新しい一年もよろしくお願い致します。

古谷

古谷でございます

ショートカクテルならば、「シャルルジョルダン」で参りましょう。

もしくは華やかに「エチュード」。

ドライに楽みたいご気分でしたら、「スーズギムレット」を。ハードシェイクでキリリと仕上げるのはいかがでしょう?

澄み渡る秋風の冷たさに切なさも覚える神奈月。

「君の悲しみに寄り添う」

10月の花リンドウは一本ずつ咲く姿からこのような花言葉を宿します。

野山に自生するこの花の根を原料に精製されたリキュールが存在するのをお嬢様はご存知でございますか?

そのリキュールの名は、

「スーズ」。

ほのかな甘味の後に迫ってくるビターなテイストが絶妙な、色合いは美しい黄金色を放つリキュールでございます。

霊薬を求めた錬金術士たち最大の遺産とも云われる薬草酒。

この薬草酒とはなんとも言い難い麻薬的な魅力を秘めたお酒だと存じます。

現にとあるリキュールに含まれるとある主成分には、マリファナに似た幻覚作用があるとされ、なんと製造禁止になったボトルも存在するほど。

そんな薬草酒でございますが、ゴッホやヘミングウェイといった名だたる芸術家もその魅惑に取りつかれ、こよなく愛飲していたと言われております。

スーズもまた同じく、ピカソが愛したお酒として有名で、彼が描いた様々な作品に登場します。

「君の悲しみに寄り添う」

麻薬的で少しばかり危険な魅力を漂わす反面、スーズを眺めているとそれはなんとも繊細でロマンチックなボトルにも想えます。

今宵はこの美酒のお味に酔いしれてみてはいかがでしょうか?

古谷

古谷でございます

燃えすぎた真夏の太陽は沈みこみ、焦げたような余韻を残すこの季節の空に映るのは十六夜の月。

影伸ばしその面影を照らます。

「天国にいる亡き恋人に捧げられたグラス」

そんな悲劇的な逸話を持ったカクテルをご存知でございますか?

カクテルの名は

「マルガリータ」

作者は米国ロサンゼルスのとあるバーテンダー。

彼は若き日に初恋の女性を狩猟中の流れ弾で亡くしており、メキシコ生まれの彼女をしのび、恋人の故郷のお酒にございますこのテキーラをベースにカクテルを考案しその名前をマルガリータと名付けました。

このカクテルは1949年の全米カクテルコンテストで入選されており、感動を呼ぶエピソードとともに現在においても大変人気のある有名なカクテルとして、お外のBARにおいても定番としてご用意されております。

今宵を照らす既望の月の下。

美しい悲恋のエピソードに想いを馳せ、秋の夜長にグラスを傾け過ごしてみるのもいかがでしょうか?

古谷

古谷で御座居ます

降りしきる大粒の雪。地面にはふわふわに敷かれた真っ白な絨毯。寒空の下、元気いっぱい駆け回る子供たち。

鬼ごっこやかくれんぼ。肌寒い冬の季節もおかまいなしでちびっこ達は元気いっぱいでございます。

ひとりだけ隅でせっせと雪を集めて何かを作り続けている子がいます。

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