古谷でございます

まるで白く濁ったような、けむるような。

目には見えぬともそんな空気が視界を覆う。おもわずうだり、ぐだをまく。そんな蒸し暑い日が続く真夏日和。

むせかえるような白昼の熱気に包まれた、貴女の疲れたお身体に澄み渡る、そんな一杯に相応しきグラス。

それは至ってシンプルなつくり方。きわめて簡素なルセットではありますが、英国由来からの歴史ある、伝統の一杯でございます。

“古谷でございます” の続きを読む

古谷でございます

日を追う毎に、その揺らめきは増すばかり。

煌めくあなたの不思議な瞳に負けてしまいそう。

ほとばしるような熱き眼差しも、深き夜が訪れようやく落ち着きはじめて参りました。

静寂を刻むティーサロン。そのいたるところに装飾された麗しき紅き薔薇。闇の間を染めるその色は太陽の如くに輝く、情熱の貴石ルビーのようでございます。

そんな夜。貴女にお贈りしたい一杯のグラス。

カクテルの名は、

「Jack Rose-ジャックローズ」

林檎のフルーティな香り。芳醇な熟成香がまるでベルベットのようになめらかな、ノルマンディが生んだ高貴なる酒calvados。

薔薇色の色彩を現すのは甘酸っぱいザクロ。

程よい酸味にシロップの甘み。そしてトロリとした凝縮感を堪能できます。

めくるめくような真夏日の夜。今宵、貴女がこのグラスを手にすれば、

心溶かしてしまいそうな情熱と、ロマンスの世界が覗きこめるかもしれません。

古谷

古谷でございます

窓の向こうから響く雨音。

しとしとと聴こえてくるこの音色が、まどろみの中でも耳を伝い、どこか朧げに流れてゆく。そんな夜もそろそろ多くなって参りました。

6月の空に映る月は今宵も、まるでかの楊貴妃がこよなく愛したパールの如く、銀白の煌めきを真珠の粒のように地上にこぼして輝いているようです。

地上では水無月を彩る、それはみずみずしいまま咲く紫陽花の花。

この花もそんな月明かりをたっぷりと浴び、雨夜に映えるほどに艶やかで美しい色を魅せてくれます。

そんな景色を窓を開いて眺めていたら、気づけば夜もすっかり更けてしまいました。

降りつづく長雨により、今宵もどこか肌寒い夜になりそうでございます。

オヤスミ前のカクテルは、じめじめとしたこの頃をしばし忘れさせ、6月のしっとりとした風情が垣間見れるような。そんなグラスに致しましょう。

心身を潤わせ、冷えた身体を温め、美容にも良いとされる。それは旬の果実ライチのリキュール。すっきりとした爽快な口当たりをお贈り致します。

「China Blue-チャイナブルー-」

その神秘的な色合いを見つめ、グラスにひろがるハーバル系の香りをたっぷりと吸い込み、すっきりとした喉越しで今日の疲れを癒して頂きましょう。

「Violet Fizz-ヴァイオレットフィズ-」

今日はいつもよりもほんの少しだけ。外の雨音に耳を傾けながらじっくりとグラスを飲み干してみてください。そして、どうか今宵も良き夢を観れますように。

古谷

古谷でございます

日盛りの時、このところ幾日にもわたり空から降り注ぐ暖かな春の陽射し。

お屋敷の広大な敷地を隔てる路樹たちもたっぷりとそれを浴び、まるで天翔ける程伸びやかに芽吹きはじめました。

舞い散る薄紅の花びらが魅せた儚げな美に代わり、なんとも生命力に溢れた若葉たちが、初々しくてあどけなくとも、すくすくと伸びはじめております。

夜は更けて参りましたが、昨日よりも今日。今日より明日と強さを増した白昼の日照りによって、お身体は火照りお疲れではございませんか?

そんなお嬢様にお贈りしたい、今宵のカクテルはモヒート。

クラッシュした氷の隙間に敷きつめられた、若葉のようにみずみずしく育まれたたっぷりのミント。冷凍庫でしっかりと冷やしたラム酒。グラスのなかで満たされた爽やかな薫りが、熱を帯びた貴女の心身にきっと涼を届けてくれるかと存じます。

グラスを傾け、喉を潤し、万緑の薫りを吸い込んで今日の疲れを癒して頂きましたなら、月明かりに美しく照らされた、まるでエメラルドのような今宵の新緑をただただ静かにみつめ、翠玉の煌めきをその瞳にそっと映す。貴女もそんな夜を過ごしてみませんか?

古谷

古谷でございます

海の世界で生きる舞姫。

異なりし場所で生きる、地上の彼に心惹かれた彼女はすべてを賭してまで、水のなき晴れた海へと昇ります。

たとえその声奪われようとも、その身を焦がすほどに溢れ出る、彼に抱いた切なく儚いその想い。それでも想いは届かなかった。泡のようにやがて消えゆく、それはあまりに切なく悲しい物語。

儚く立ち上る泡のような気持ち。決して叶わない願い…。

「スプモーニ」と申しますカクテルをご存知でございますか?イタリア語でspumare(泡立てる)という意味の言葉から生まれたこのカクテル。甘みの中に、ほろ苦い余韻が後をひく、泡立つこのグラスを眺めていると、掴めない気持ちすら飲み込んでしまいたい。そんな今にも弾けてしまいそうな、儚き想いが込み上げてくるかもしれません。

「人魚の涙」

アクアマリンのもうひとつの名前。

もしもこの世に涙の色に染められた、そんなスプモーニがあるとしたら、その色はアクアマリンの輝きの如く、きっと儚い色をしているに違いありません。そしてそのお味はあまりにも爽やかで、甘くほろ苦い。海の舞姫、人魚の想いを表すような、そんなお味でないかと存じます。

スワロウテイル開館記念日。当日までまもなくでございます。

何かのおわりが何かのはじまりのために在るのだとしたなら、たとえこのカクテルが儚く消える泡のように、切ないお味をしていたとしても、貴女を前へと進めるような、そんな新たなる門出のグラスになれば幸いでございます。

よろしければお召し上がり下さいませ。11周年記念カクテルとして、当日ご用意致します3月のバースデーカクテル。その名前は、

「Tear–moni」ティアモーニ。

古谷