サイコロ

ご機嫌麗しゅうございます、お嬢様。隈川でございます。

突然ですが、お嬢様。
お嬢様はサイコロを振ったとき、どの目が出たら当たりだと思いますか。

あ、スタンダードな6面体のサイコロで結構です。

 

 

 

…はい、おっしゃる通りです。
ゲームに興じているわけでもなくただサイコロを振るのに当たりもハズレもございませんね。

ですが、今の質問に対して咄嗟にご想像された数字はあったのではないでしょうか。

6でしょうか?1でしょうか?
もしくはお好きな数字でしょうか。

個人の「価値観」とはそういうもののような気がいたします。

正解ではなく、なんとなくそれが良い。どの面を当たりだと思っても良いのです。

人と違うから間違いなんてことはないのです。

え?ちなみに私だったらどの面が当たりか、でございますか?

私はお嬢様が仰った面が当たりだと思います。

隈川

ご機嫌麗しゅうございます、お嬢様。
隈川でございます。

昨年は大変お世話になりました。
今年もお役に立てるよう誠心誠意努めますので、何卒よろしくお願いいたします。

ここのところ寒さもいよいよ本格的でございますね。こんな時期はついつい鍋を作りがちです。

昔はなんとなく鍋といえば大人数で食べる物、という認識がありましたが自炊をするようになってからは一人鍋にもすっかり慣れました。

肉に野菜にキノコやお餅。
色とりどり個性的な具材がスープによって調和してゆく。

まるでティーサロンの使用人たちのようですね。

お肉も野菜もまとめて「鍋」であるように、各個人に個性はあれど皆スワロウテイルというスープに入ればひとくくり「使用人」なのですから。

お嬢様に美味しくお楽しみいただき、心から温まってもらえますように。
味のある使用人でありたいものです。

 

あ、お嬢様。
お鍋ができました。

邪の道はheavy

ご機嫌麗しゅうございます、お嬢様。
隈川でございます。

最近ではティーサロンにお仕えするフットマンも増え、賑やかなものです。

気がつけば私もこの屋敷に勤めて9年。時折「隈川さんの給仕に憧れています!」なんて言ってくれる後輩までいるのですから、大変ありがたいことです。

 

本当にありがたいことではあるのですが、後輩たちには私の様になんて決してならないでいただきたい、と願ってしまいます。

以前から度々申し上げてはおりますが、私には使用人の才能が致命的にございません。

使用人というのは

「主人が本当に求めていることを察すること」

「主人の望まぬときには口は開かないこと」

「個を捨て全に溶け込むこと」

「第一に主人のことを考えること」

これらができて然るべきなのです。

斯くいう私は、追い求める使用人像に縋りつく癖に、あまつさえそれが叶わず「お嬢様の笑顔を賜りたい!」「自慢の使用人でありたい!」と自身の欲求ばかりが先行して口を開けば使用人の分際で冗談や余計なことばかり。

恐らくお嬢様は「そんな使用人がいても良い」と仰るでしょうし、お仕えする主人のその言葉は絶対であり、素直に飲み込むべきだと理解してはおります。

目的と手段で申し上げれば、お嬢様のお役に立つことが目的の使用人なのですから、手段である「在り方」に拘るのは馬鹿げているとも思います。

それでもやはり私は使用人の矜持というものを捨てきれずにいるのです。

 

屋敷での生活が何年経とうとも、自分が使用人としてこのティーサロンに仕えるうえでの正解を探し続けております。もしかしたら答えなどないのかもしれません。

だからこそ、後輩たちには使用人然とした美しい背中を追いかけて欲しいと思うのです。

そして、その背中を目指し進む途中、正道が途切れどうしようもなくなったときに、邪道を迷いながらともに真面目に進む手助けができるような先輩でいたいのです。

どうか未来ある後輩たちが、使用人として堂々と胸を張ることのできる未来が訪れますように。

 

長々と使用人の内事を語ってしまいまして申し訳ございません。こういう所も見直さないといけませんね。

そういえば先日庭師が「元気でいることも才能だよ」と申しておりました。真面目なお調子者の私としては、そちらの方がまだ幾分か簡単なのですがね。

お味噌汁の具

お寛ぎ中に失礼いたします、お嬢様。
隈川でございます。

お嬢様、本日はシェフがご夕食に和食をご用意するとのことでお味噌汁のリクエストを伺いに参りました。

わかめ、おとうふ、きのこ、大根、キャベツ、玉ねぎ…etc
なんなりとお申し付けくださいませ。

…え?
お味噌汁ではなく豚汁が飲みたい、ですか。よろしいですね。
畏まりました!シェフにお伝えしておきます。

それにしてもお味噌汁の具ひとつとっても正解なんてございませんし、選択肢は無限でございますね。

人生とはまさしく選択の連続。
今、お嬢様はまさしく未来をご自身で選ばれたのですね。

いえいえ、大袈裟などではありません。

例えば、街にあるおおよその物は、アイデアの選択、それを採用する決断の選択、実現するための技術の選択、それらの上に成り立っているのです。

つまるところ、お嬢様の先ほどの豚汁を召し上がるという選択が巡り巡ってなにかしら大きな影響を及ぼすこともあるかもしれませんよ。

…え?そんなことよりアスコットタイに染みがついているわよ、ですって?

ああっ!これは失礼いたしました。
先ほど配膳用にお醤油を運んでいたときにハネたようです!

選択について語るより洗濯が優先のようでございます。

シェフにリクエストをお伝えして、お洗濯に行って参ります!
失礼いたします。

言葉キャッチボール

ご機嫌麗しゅうございます、お嬢様。
隈川でございます。

私、よく「隈川さんは会話がとても上手ですよね!」なんて他の使用人などに言われることがございます。

褒めていただけるのは大変嬉しいので、その場では
「そうでしょう、そうでしょうー!もっと褒めてくださって構いませんよ〜」
などと申してしまうのですが…ここだけのお話、本当は私、会話は下手くそなのです。

たしかに喋るのが苦手ではないことは自覚しております。寧ろ得意だと思います。しかし「喋るのが得意」と「会話が得意」は別物なのです。

よく会話はキャッチボールに例えられます。一つのボールをお互いが落とさないように相手にとりやすい高さや速さで放ることで成立するのです。

ところが私はキャッチしたボールで魔球の練習を始めて、相手がそれを一生懸命取ろうとしてくれているうちにスペアのボールを投げ始めてしまうのです。ぽいぽいぽいぽい自由に沢山投げてしまいます。

言いたいことを言ったり、話したいことを話すだけではなく、相手に合わせたペースで真摯な返球ができる方が本物の「会話が上手」な人なのではないかな、と思います。

ですからそれができる方を見ると、凄いなぁ、と感心してしまうのです。

まぁ、私は運動音痴ですので実際のキャッチボールよりは頑張り甲斐がありますね。今後の目標はスムーズな会話のキャッチボールでございます!

 

…え?隈川と喋ってるとキャッチボールというよりバッティングセンターの気分、ですか。

なるほど、ホームランが打てると良いですね。

夏の楽しみ方

ご機嫌麗しゅうございます、お嬢様。
隈川でございます。

今年は早くに梅雨が明け、照り返す日差しにお洗濯物もよく乾きます。

他の季節も大好きなのですが、やはり夏はわくわくしますね。毎朝青い空を見る度に何かが始まるような気がするのです。

空調の効いた部屋での読書。
暑さ対策をしてお外でスケッチ。
夏らしい音楽をイヤフォンで聴いて。
アイスティーの新しいレシピを研究するのも良いですね♪

お嬢様が暑さにうんざりしてしまわないように、夏の楽しみ方をご一緒に探してゆきましょう。

あ、でも「暑すぎてもう嫌!」なんてお互い言い合うのも夏の醍醐味ですよね?

…え?そんなに元気なら一人で外に出てきなさい?

かしこまりました!
三段重ねのアイスクリーム、お嬢様の分も買って参ります!ちゃんと溶ける前に帰りますね!
では、いってきます。

ただいま帰りました!
申し訳ありません、お味を伺い忘れました!では、もう一度いってきます!

水墨

ご機嫌麗しゅうございます、お嬢様。
隈川でございます。

最近、水墨画を拝見する機会がございました。

濃淡で表現される無彩色の風景は、普段私の目が映している色で溢れた世界以上に鮮やかに感じられました。

歴史的な技法や作者の情緒を感じとるには私の学が不足しておりますが、それでもなんとなく一枚の絵の前で時間を忘れて眺めてしまいました。

人様にお見せできるものにはならないかもしれませんが、いつか私も個人的に墨で絵を描いてみたいな、と思いました。