「お嬢様への手紙~横浜紀行・弐」

我が敬愛せしお嬢様。ご機嫌麗しゅうございますか?時任でございます。
抜けるような青空には、筆で掃いたような鮮やかな白い雲が流れ、元気な蝉の声
が、夏という季節の到来を誇示するかのように鳴り響く…。
世はまさに真夏と言うべき季節のようでございます。

最近はドアマンを仰せつかることも多い時任でございます。
扉を護らせて頂いている間は、外界から漂い込む陽光に怯え、夏の暑気を感じて
はお嬢様の身を案じております。

お嬢様方、夏の太陽の下、向日葵の花のように微笑むお嬢様方も確かに美しゅう
ございます。
ただ、お身体に障るといけません故、どうか日傘と帽子はしっかりと携えて下さ
いませ。
この夏らしき真夏の日々に相応しく、白いつば広の白帽子に、軽やかなレースの
白日傘などいかがでございましょうか?
輝く陽光の下、青空の下に映える清楚な白いお姿で、笑顔でお戻り頂けるお姿を
、私どもは眩しさに眼を細めながらお迎えすることでございましょう。

――…あちちちちち。

なんにせよ。このように如何にも夏らしい夏は数年ぶりのように存じます。
お嬢様方、くれぐれも日中は涼しくお過ごし頂き、無理をなさってお体の具合を
崩しませんよう、ご自愛下さいませ。
私どもは、お屋敷を涼しく整えながら、いつでもお帰りをお待ちしております。

さて、それでは今宵も駄文を添えさせて頂きます。
どうかお休み前のナイトキャップ代わりにでも、お楽しみ頂ければ幸いでござい
ます。

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お嬢様への手紙~横浜紀行・壱

我が敬愛せしお嬢様、ご機嫌うるわしゅうございますか?時任でございます。

春も梅雨も何処へやら、世は早くも真夏の装いでございます。
お昼のお使いも命懸けになってまいりました。日陰から日陰へと、陽光に焼かれ
た身体から白煙を上げつつ駆け抜ける日々でございます。
…大旦那様、なぜわざわざ私をお昼のお使いに出すのですか…。

とかく、この季節は体力勝負でございます。
暑さに食欲のわかぬ日もありましょうが、お嬢様がたは太陽ごときに屈服せず、
誇り高くしっかりご飯をお召し上がりくださいませ。

夏の陽射しの下、向日葵のような笑顔を湛えて御戻りになるお嬢様の姿を、お待
ち申し上げております。
その笑顔だけが、私が唯一愛することのできる太陽でございますゆえに。

それでは、この先は例によりて戯言を綴らせていただきます。
どうかお嬢様、この先はお休み前のベットか、退屈な馬車の旅の途中にでもご覧
くださいませ。

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お嬢様への手紙~朝を司る者たち

我が敬愛せしお嬢様、ご機嫌麗しゅうございますか?時任でございます。

つい先日まで、街行く人々は外套の襟を合わせ身を縮めて居られたというのに、
もう既に世は夏の薫りすら感じられるようでございます。
今年の季節は例年にも増して気紛れであられるようですね。まるでお嬢様のよう
…あ、いえ、失言でございました。ごほんごほん。

とはいえ、まだ陽が落ちれば肌寒くなる日もございます。また、急な雨の日もご
ざいましょう。
どうかお嬢様、当分はご面倒でも、肌寒くなられたときに羽織って頂く御召し物
と、傘の御用意は怠らぬようお願い申し上げます。

この季節に生き生きと咲き誇る庭園の華々のようなお嬢様の笑顔は、我ら使用人
の何にも代え難き慶びにございます。

その笑顔が曇る事なきよう、くれぐれも御身ご自愛下さいませ。

…それでは、毎回口喧しい事を申し上げましたが、これより後はいつものごとく
戯れ事にございます。
おやすみ前のひと時などに、ナイトキャップと共にお楽しみ頂ければ幸いにござ
います。

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お嬢様への手紙~桜とチェスボード

我が敬愛せしお嬢様へ。
ご機嫌うるわしゅうございますか?時任でございます。

気付けば桜も咲き誇り、薄紅の霧の如くに庭園を彩る季節となりました。
陽射しも大分暖かくなったと聞き及んでおりますが、三寒四温とも申します。油断して凍えたりなさいませんよう、上着はまだ温かいものをご用意くださいませ。

さて、そんな桜の季節でございますが。
私事にて恐縮ながら、時任めこの時期には恒例の用事がございまして、大旦那様にお休みを賜り些か遠出をしておりました。
今宵は、そんな休日のことを寝物語代わりに綴らせて頂きます。
どうか、お休み前でなのに目が冴えたときや。昼下がりにお暇ができたときなどにお読みいただけたら幸いでございます。

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お嬢様への手紙 ~ 爽やかな朝

おはようございます、お嬢様。時任でございます。

おやおや、まだおねむでございますか?どうかお目覚めくださいませ。
今日もよい天気でございますよ。
さぁ、カーテンをお開きいたしましょう。
爽やかな朝日を浴びれば、眠気など吹き飛びますよ。

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お嬢様への手紙 ~ 粉雪舞う夜に

我が敬愛せしお嬢様へ。
今宵は時任よりお手紙申し上げます。

ご機嫌いかがでございますか?
街にもどうやら、粉雪がちらつき始めたようでございますね。

お嬢様は、雪が降る中で夜空を見上げた経験はございますか?
星の光すらない、全き暗闇の中から、真白い羽毛が尽きることなく舞い降りてくるかのような眺め。
いつまで眺めていても飽きること無い美しさに、時任などは時間を忘れて見入っておりました。

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お嬢様への手紙 ~ 番外:地下深くに眠る手紙

わが敬愛せしお嬢様、ご機嫌麗しゅう御座いますか?時任で御座います。
つい先だってお手紙を差し上げたばかりで御座いますが、時外れた文をお送りする事お許しくださいませ。
世俗にはまだまだ、性質のよろしくない風邪が猛威を振るっているようで御座いますが、お嬢様はご無事で御座いますか?
政敵やら侵入者やら暗殺者やら…目に見えるお屋敷の敵は時任たちが役目にかけて退治いたしますが、風邪のウィルスばかりはお嬢様ご自身で身を守って頂くしか御座いません。
どうかお嬢様、お出かけからお戻りのときは、うがいと手洗いをしっかりと。そしてビタミンをしっかりとお摂りくださいませ。
これだけで、風邪を召される確立は激減するかと存じます。
どうか時任からのお願いで御座います。
うがいと手洗いとビタミン。しっかりお守り頂き、ご自愛くださいませ。

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